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町立日本語学校の今――北海道東川町の挑戦――(第1回)
- 2018/2/26
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- 公立日本語学校, 地方創生, 東川町
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町立日本語学校の今――北海道東川町の挑戦――(第1回)
[写真文化首都、写真の町・東川町という文字が掲げられた東川町役場]
東川町を訪れたのは、断続的に雪がちらちらと舞う2月8日。地方の田舎の町が日本語学校を運営するのは、労働力確保か観光誘致のいずれかで、なんとも短絡的な発想ではないかと思っていた。しかし、そうしたうがった見方は数時間であっけなく覆された。
全国各地で公設型あるいは公設民営型の日本語学校が注目を集めている。国際交流によって地域を活性化させたいというのがその理由だ。実際には日本語学校に入学する外国人留学生をアルバイトとして活用し、労働力不足に悩む地元産業を維持していきたいという思惑があるようだ。外国人留学生は日本で勉強をすることを目的に留学生ビザを取得して入国する。その一方で出入国管理及び難民認定法第19条第2項に定められる資格外活動許可申請をすれば、1週間に28時間、1日8時間までの就労が認められる。この制度の枠を超えて労働させるケースも少なくないようだ。いわゆる「偽装留学生」や「デカセギ留学生」などと揶揄される所以だ。
しかしながら町をあげて留学生を歓迎し、国際交流と人材育成に本気で取り組み、日本語学校を起点に地域活性化を目指す自治体があった。北海道東川町がそれだ。東川町は旭川市の東に位置し、大雪山国立公園の麓、人口約8,000人の町である。お米と工芸、観光の町として年間100万人以上の観光客が訪れる。開拓90周年の1985年に「写真の町」を宣言し町の活性化に努めてきた。一時は6,000人台にまで落ち込んだ人口も約8,000人まで回復している。北海道では2番目に増加率が高い自治体だ。
[町立日本語学校に掲げられた町の姿勢を示すポスター。自治体ベンチャーと自称する]
この町は面白い。官民一体となって町をよりよくする制度が整っている。老人福祉や子育て支援も手厚い。教育や文化施設も充実している。特区申請による幼保一元化にはいち早く取り組み、ふるさと納税は「ひがしかわ株主制度」という独自の解釈を加えて促進している。町内だけで使えるポイントカードも始まった。人口が8,000人に回復した2014年、「写真の町」から歩を前に進め、「写真文化首都宣言」を行った。町がその次に掲げるのが「世界の人々に開かれた町」である。
東川町はカナダやラトビアの都市と姉妹都市条約を結び、韓国の都市とは文化交流協定を結ぶ。2009年には韓国の中高生46名を受け入れ、東川町短期日本語・日本文化研修事業をスタートさせた。成長著しい近隣諸国と友好をはかり、日本語・日本文化を世界に発信することを通じて国際交流を続けており、2014年までの5年間に約1,000名の短期滞在の日本語学習者を受け入れた。もっともこの事業が具現化したのには偶然も手伝った。町内の専門学校で学んだ留学生が町を好きになり、留学生から町内滞在型の日本語学習で外国人を誘致してはどうかと提案があった。それをすぐに実現すべく、町の担当者が韓国に飛び、話をまとめてきたという。そのスピーディーな対応に町づくりへの姿勢が現れているように感じる。町を好きになった外国人が、次の外国人をつれてくるという好循環も生まれている。
[地域交流センターを併設した東川小学校。児童は700名以上。200メートル以上直線の平屋に開放的な教室が並ぶ]
そして2015年10月、全国初となる公立日本語学校が誕生した。背景にあったのは少子化だ。町の教育機関に通う学生がピーク時から半減し、学生寮の空き部屋が増えた。「学生がいなくなっては町が終わってしまう」という危機感が生まれた。そこで、数が増加してきていた短期留学生に、町に一定期間生活してもらい、しっかりと日本語を学び、日本文化を学んでほしいと、町立日本語学校の設置に向かったのだ。
[ふかふかの雪に覆われる小学校校舎を改装してつくられた東川日本語学校]
充実した町の奨学金制度や寮費の補助、町のスタッフである国際交流員が留学生の相談に乗るなど独自の制度を整え誕生した東川日本語学校。設立目的には、「日本語、日本文化を世界に広め、日本語教育を通して国際貢献を行う」「東川町を世界に向けてPRし、世界に開かれたまちづくりを推進する」「交流人口を増やし、地域および地域経済の活性化を図る」とうたう。それを単なるお題目にするのではなく、実現に向けて努力しているように感じた。
<第2回:町立日本語学校が起点となる町の活性化――松岡町長に聞く―― につづく>
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特集:日本語教育と地方創生
人口減少が急速に進む地方都市において、日本語学校を地域の活性化に結びつけている町があるのをご存じだろうか。北海道旭川空港から東に車で15分の東川町だ。2015年10月、日本初の公立日本語学校を開校し、町をあげて外国人留学生を歓迎している。「偽装留学生」や「デカセギ留学生」などと揶揄されることが多い昨今、地方の公設の日本語学校がどのように留学生と付き合っているのか。雪深い町立東川日本語学校を訪ね、その実情を通して、日本語教育と地方創生の可能性について考えてみた。