西日本新聞の連載企画の第一部「出稼ぎ留学生」が終了

西日本新聞の連載企画「新移民時代」の第1部の「出稼ぎ留学生」が14日、計7回のシリーズを終えました。「移民」という言葉をタイトルに掲げ、「出稼ぎ留学生」という造語も言い得て妙なワーディングです。アジアの留学生が労働力不足を補う地方都市の風景がよく描かれていました。何より強い問題意識と新聞社としての覚悟が感じられました。年明けから始まると思われる第2部に期待を抱かせる上々の内容だったと思います。

1回目からタテヨコの見出しを紹介します。①暮らしの隣「移民」100万人――工場バス、アジア系続々②都会の隅にアジア村――時に摩擦 交流も芽生え③過疎の島に日本語学校――活力期待、意識の壁も④夢追いバイト掛け持ち――「週28時間」超え黙認⑤突然「退学」失意の帰国――学校乱立 生徒犠牲か⑥挫折のち「偽装難民」――フルタイム就労魅力⑦「28時間の壁」ジレンマ――守れば困窮、破れば摘発

見出しを見ただけでも、記事がおおむね留学生側の視点で書かれていることがわかります。「週28時間」は留学生が許される資格外活動、つまりアルバイトの時間です。しかし、多くの留学生は、週28時間を超える労働に従事しています。その不法な就労によって、地方経済が支えられているという現実があります。「週28時間の壁」を何とか突き崩せないものか、記事には、取材記者のそんな気持ちが込められているように感じられました。

これに対して「ルールを守らせろ」という声もあるでしょう。政府の立場もそうです。法務省入国管理局は規制を強化するかもしれません。

一方、留学生を受け入れるため専門学校を誘致した佐賀県の取り組みが3回目の企画記事で紹介されていましたが、奨学金や助成金まで支給して「アジアの活力」を取り入れようとする自治体も今後、増えるかもしれません。

だったら、どうしたらいいのか。西日本新聞社には、賛否の声を載せるだけでなくシリーズを通じて新聞社としての提言を出してほしいと思います。

「出稼ぎ留学生」の企画はまもなく西日本新聞社のウエブサイトで読めるようになるそうです。ぜひとも紙の新聞を購読できない九州以外の人にも読んでもらいたいものです。

 

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

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