西日本新聞のコラムが「課題が見えてきた」

「アジアの若者の夢を食い物にするような現状を改めなければ、いずれ日本は見放される」――。「新 移民時代」という連載記事を掲載している西日本新聞の取材班の記者がコラム(1月27日)でこう警告している。

「新 移民時代」の連載は、第1部「出稼ぎ留学生」、第2部では「留学ビジネス ネパールからの報告」を掲載。当フェイスブックを通じて記事にアクセスできるURLを紹介したので読まれた方もあるかと思う。外国人をテーマにした従来の連載記事より一歩踏み込みこんだ取材を通じて、留学生の置かれた状況と、人口減少にあえぐ地方都市の深刻な現状を描いている。

コラムを執筆したのは、社会部の取材班キャップの坂本信博記者。連載はこれからも続くが、コラムの中で「二つの連載を終えて課題が見えてきた」という。留学生は「日本に行けば稼げる」という甘言に誘われて留学するが、日本語学校の通いながらアルバイトをしても、週28時間という就労制限を守れば、生活にも困窮する。そのために不法就労が横行する。一方で彼らを歓迎しているのは、コンビニや食品工場、宅配便の仕分けなど、労働力不足に苦悩する中小の企業や商店である。なくてはならない労働力だ。

「留学生30万人計画」の看板を掲げている政府の留学生政策は、すでに制度疲労を起こしている。大学に進学する留学生は増えず、働く留学生が急増している。西日本新聞が取材した日本語学校の現状がそれを雄弁に物語っている。日本語教育推進議員連盟の総会でも、議員から指摘があった。「日本語教育は週20時間なのに、それを上回る週28時間のアルバイトを許していいのか」と。もっともな指摘のようにも聞こえるが、アルバイトの時間を法的にもっと短くし、規制を厳しくしたら問題は解決できるだろうか。法務省入管局が違法事例のすべてに対応できるわけではない。

人口減少に伴う動力不足は深刻になるばかりだ。コラムは「ときに不法就労で働く彼らの恩恵を私たちは受けている」と書く。不足を補っているのが留学生だという現状を直視しなければならない。同時に留学生がブローカーなどの搾取されている構造があれば、それを是正する措置をとらなければならない。

この問題は日本語議連の場でも議論されると思われる。政府はどのような対応をすべきか。「アジアの若者を食い物にするような現状」は、早急に是正しなければならない。様々な意見や利害を調整するのが政治だ。日本語議連の「知恵」に期待したい。

坂本記者のコラムには、以下のURLでアクセスできます。

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/opinion_view/article/304170

 

 

 

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

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