国際ワークショップで外国人女性が日本語教育の必要性を強調

◎国際ワークショップで外国人女性が日本語教育の必要性を強調

 外務省と国際移住機関(IOM)共催の「外国人受け入れと社会統合のための国際ワークショップ」が1日、東京都内で開かれました。ここ10年はほぼ毎年参加しているイベントです。今年のテーマは「多文化共生に向けてー外国人女性の生活と活躍を中心に」。2つのパネルディスカッションが行われましが、計6人の女性パネリストのうち、日本人は1人だけで5人が外国にルーツを持つ女性でした。

外国人パネリストの出身国は、フィリピン、フィンランド、中国、ブラジル、ボリビアで、このうちパネル2(外国人女性の活躍に向けて)のパネリストとして発言した日系ブラジル人3世の柳瀬フラヴィアさんとは、彼女が学生だった10年ほど前からの知り合いです。

 リオデジャネイロ出身の彼女は出稼ぎのため先に日本に渡航した両親を追って、9歳の時来日。まったく日本語がわからないまま、静岡県の小学校に入学しました。本人は中学校を出たら両親と一緒に働くつもりでしたが、中学校時代の先生の熱心な指導もあって高校へ。その後は国際基督教大学、カナダのヴィクトリア大の大学院に進学しました。アルバイトで学費を貯め、奨学金をもらうなどして、自らの力で勉強できる環境を作ってきました。しかも日本語の能力に加え高校時代には英語の弁論大会の県大会で優勝するほど英語も堪能になりました。母語はポルトガル語ですから、3か国語を使いこなすグローバル人材です。

彼女は、小学校時代には言葉がわからないだけでなく、いじめにも会いました。それを乗り越えた大学時代は、キャンパス内であちこちから「フラヴィアさーん」と声がかかる人気者でした。大学院修了間際、「就職は大丈夫?」とメールで聞いたところ、「いい会社からいくつもオファーがありました」との返事。結局、帰国して電通に入社し、モーレツ社員として活躍していましたが、自ら志向していた仕事ができそうだとして「グーグル」に転職。日系ブラジル人の子供が「言葉の壁」を越えられず、ドロップアウトしていく例が少なくない中、積極果敢に自らの生きる道を切り開いています。

さて、パネルやフロアとの議論を通じて話題になったのが「日本語の壁」です。外国人が日本で活躍するには、日本語の習得が不可欠す。ただ、その学習機会が十分にあるとは思えません。会場には多くの外国人女性が詰めかけ、フロアからの質問など発言が相次ぎましたが、その中で「日本語(教育)は権利になっていない」という声が上がったのが印象的でした。日本語教育は浮上分であるという指摘だ。グローバル時代が進展すれば、語学教育は外国人を受け入れ国にとっては「義務」になるかもしれない。

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

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イベントカレンダー

6月
12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
6月 12 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
6月
29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
8月
29
7:00 PM 異文化間コミュニケーション入門 @ オンライン(ZOOM)
異文化間コミュニケーション入門 @ オンライン(ZOOM)
8月 29 @ 7:00 PM – 9月 19 @ 8:30 PM
※内容は2022 年度のものとほぼ同じです。 【全4回】 日程: 第1回:2024年8月29日(木)19:00-20:30 第2回:2024年9月5日(木)19:00-20:30 第3回:2024年9月12日(木)19:00-20:30 第4回:2024年9月19日(木)19:00-20:30 【内容】 第1回:文化とこころの関係 第2回:国や民族以外の異文化 第3回:文化を超えて分かり合う 第4回:ステレオタイプ・偏見・差別主催者のカテゴリ大阪YMCA日本語教育センター
10月
25
10:00 AM 令和6年度生活指導担当者(中堅)... @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
令和6年度生活指導担当者(中堅)... @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
10月 25 @ 10:00 AM – 5:20 PM
令和6年度生活指導担当者(中堅)研修 当協会では、日本語教育機関における生活指導担当者の能力向上を図るため、標記研修を実施しております。 今年度におきましても下記により実施しますのでご案内申し上げます。 なお、令和7年2月頃に初任の生活指導担当者を対象にした研修を実施予定です。 皆様のご参加お待ちしております。 1 日時 令和6年10月25日(金)10:00~17:20 2 会場 国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区) 3 参加要件 日本語教育機関又は大学・専門学校等教育機関の現場において、 少なくとも3年程度実際に留学生の生活指導に携わっていること。 4 参加費 維持会員機関 8,800円(税込)/1人当たり その他の教育機関  17,600円(税込)/1人当たり 5 応募締切:令和6年9月27日(金) 6 詳細、申込方法 https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3193&f=news 〔問い合わせ先〕一般財団法人日本語教育振興協会 事業部 小野寺陽子 TEL:03-6380-6557 FAX:03-6380-6587 E-mail: nisshinkyo2@gmail.com

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