西日本新聞の連載「新 移民時代」が石破元幹事長のインタビューで終了

 

昨年12月から西日本新聞が力を入れて展開してきた長期連載「新 移民時代」が、16日朝刊の第9部「明日の提言」⑧をもって終了した。この連載記事については随時、当フェイスブックでも内容を紹介してきたが、締めくくりは、石破茂元自民党幹事長のインタビュー記事。石破氏は、政府内に外国人受け入れのための一元的な組織が必要だという認識を示した。最近では石破氏と同様の認識を持つ政治家は少なくないと思われる。政府も外国人受け入れには積極的だ。

しかし、安倍首相自身が「移民政策と誤解されないように」と語り、政府が「移民」という言葉に少なからず抵抗感を持っている以上、日本が「移民国家」に“脱皮”するにはなお時間がかかるかもしれない。とはいっても、急テンポで進む人口減少にブレーキがかかることはないし、それに伴って在留外国人が増えることは間違いない。

 その意味では、「移民」という言葉を堂々と掲げた連載にブロック紙の雄である西日本新聞社が踏み切ったことは注目に値する。昨年11月に日本語教育推進議員連盟(日本語議連)の発足と符牒を合わせるように始まったことにも何やら因縁を感じる。その連載の冒頭で切り込んだのは「出稼ぎ留学生」というテーマだ。まさに日本語議連が重要課題として念頭に置いている日本語学校、留学生の在り方を問う内容だった。

ここで考えておかねばならないことは、北九州をエリアとするブロック紙が「移民」にこだわらざるをえないほど、九州は人口減少が激しく、地方経済を揺るがし始めているという事実だ。石破インタビューでの指摘しているように、人材不足で悲鳴を上げているのは地方の事業者だ。東京では実感できない「時代の変化」が地方で起きているのだ。中四国、東北などは九州以上に人口減少が進んでいる。「新 移民時代」は九州だけでなく全国で進行しているのだ。

西日本新聞社は「新 移民時代」の連載を日本新聞協会のグランプリである「日本新聞協会賞」に申請するという。受賞に値する力作であり、労作である。時代を反映した課題を提示し、問題解決のための多くのメッセージを投げかけている点でも評価できる。幸運を祈りたい。

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

4月
19
10:00 AM 凡人社オンライン日本語サロン研修... @ オンライン
凡人社オンライン日本語サロン研修... @ オンライン
4月 19 @ 10:00 AM – 11:00 AM
凡人社オンライン日本語サロン研修会『実践に基づく「やさしい日本語」の論点整理』 [日 時] 4月19日(土)10:00~11:00(オープン 9:40)※日本時間   [対 象] 日本語教育関係者、多文化共生に関心のあるすべての方   [定 員] オンライン:250名 ※ 先着順、定員になり次第締め切ります   [参加費] 無料 ※ 要予約、前日(4/18)17 時までに招待 URL を送ります   [講 師] 岩田 一成 先生(聖心女子大学)   [内 容] 『やさしい日本語ってなんだろう』(ちくまプリマー新書)を解説します。 10 年以上実践活動に関わって来て、まだまだ一般の人に「やさしい日本語」の理念は広がっていないなあと感じています。 病院関係者は英語志向が強いですし、学校のお知らせは規範に則って冗長なあいさつが冒頭部分を占領しています。 そして国や自治体の文書は細かい・抽象的・長い・硬い…といろいろなクセがあります。 これらは場面別にストラテジーを練る必要があると考えています。その際に大事な論点がいくつかあります。 ・「やさしい日本語」は話し言葉と書き言葉で別物である ・悪文追放は本来「やさしい日本語」運動とは無関係である ・メッセージの内容や社会制度が文章に強く影響を与える そんなお話をしたいと考えています。   [お問い合わせ・お申込み] 主催:凡人社 お問い合わせ・申し込み先(担当:凡人社/坂井) E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp   ※ 下記お申込みフォームかメールでお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「オンライン日本語サロン研修会(4/19)」と入れて、本文にご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。 お申込みフォーム→https://forms.gle/8A4mTHwVKRaUG3Y39
4月
27
4:00 PM オンライン読みもの作成入門講座 @ オンライン
オンライン読みもの作成入門講座 @ オンライン
4月 27 @ 4:00 PM – 7:00 PM
オンライン読みもの作成入門講座 概要 NPO多言語多読が作成した多読用読みものがどうやって作られているかを知り、実際に小グループで作る体験をしていただきます。初級学習者と中級学習者向けの2つの読みもののリライトを扱います。 ≫ 過去の報告を読む 講座の内容 多読用読みものの現状 多読用読みもののレベル分けについて 求められている題材とは? 初級向け、中級向けの多読用読みもの作成体験 作成した読みものへのフィードバック ※内容は参加者に合わせて変更することがあります 参加対象者 多読用読みもの作りに興味をお持ちの方 多読授業をやっている方で、ご自分の現場に合わせた読みものを作成したい方 NPO多言語多読の読みもの作りに参加したいとお考えの方 基本的に多読について知識がある方を対象にしていますが、多読について知識がない方は事前にご相談ください。
5月
16
5:00 PM 【教員対象オープン講座】中高生の... @ オンライン
【教員対象オープン講座】中高生の... @ オンライン
5月 16 @ 5:00 PM – 6:30 PM
日本語探究に関するレクチャーと「中高生日本語研究コンテスト」についての説明を行います。 次のような方におすすめです! ・「中高生日本語研究コンテスト」に関心をお持ちの中高・特別支援・義務教育学校の先生。 ・探究を担当されていて、生徒に様々なコンテストを紹介している先生(教科不問)。 ・日本語好きな生徒を担当している先生。 講師:田中 牧郎(明治大学)/ 村上 敬一(徳島大学)/ 又吉 里美(岡山大学)/ 岩城 裕之(高知大学) お申し込み:https://forms.gle/x8FvkXyzXAZDpR4n7 コンテスト専用サイト:https://www.junior-jpling.org/

注目の記事

  1. 移民政策の先駆者・故坂中英徳さんを偲んで 第二話 日本型移民政策の提言(上) 元東京…
  2. 移民政策の先駆者・故坂中英徳さんを偲んで 第三話 坂中論文 在日コリアンに関心の…
  3. 「『素顔の国際結婚』の今」を読んで 国籍法と国際家族のあり方を考える まず、家族へのひときわ強…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate