日本語教育推進議員連盟(日本語議連)の会長代行の中川正春氏と事務局長の馳浩氏が著者の一人として参加した書籍が相次ぎ出版された。いずれも日本語議連が取り組む日本語教育推進基本法の議論の在り方を考えるうえで参考になる書籍だ。

「外国人労働者受け入れと日本語教育」(ひつじ書房、田尻英三編)と「教育機会確保法の誕生―子どもが安心して学び育つ」(東京シューレ出版、フリースクール全国ネットワーク・多様な学び保障法を実現する会編)。中川氏は前者に「『日本語教育推進基本法』を考える」という論文を執筆。一方、馳氏は「議員立法を推進した立場から」というテーマでインタビューに応じている。また、日本語議連の河村健夫会長をはじめ浮島智子、伊東信久両衆院議員が執筆陣に加わっているほか、前川喜平前文部科学事務次官も「教育は人権保障の中核」という論文を寄稿している。

義務教育機会確保法は、馳氏が主導した議員連盟が法案を作成し、2016年秋の臨時国会で成立した。不登校の児童生徒らが通うフリースクールと夜間中学の支援を目的とした法律で、これまでの学校教育法では対応できなかった「教育弱者」の立場に立った画期的な法律だ。夜間中学には多くの外国人子弟が学んでいることを踏まえ、この法律は「基本理念」の中に「年齢又は国籍その他の置かれている事情にかかわりなく、その能力に応じた教育を受ける機会が確保されるようにする」と規定している。「教育機会確保法の誕生」には、フリースクールの関係者の問題意識やその取り組み、さらに、議員連盟としての活動が詳述されており、日本語議連の今後の活動を推測するうえで、示唆に富む内容となっている。

「外国人労働者受け入れと日本語教育」は、中川氏のほか、8人の研究者が執筆し、日本語教育の在り方を様々な角度からとらえている。中川氏は日本語教育推進基本法の議論を進める中で、現状と課題を詳しく解説している。まさに日本語議連活動を当事者が語っているわけで、「教育機会確保法の誕生」と併せて熟読すれば、基本法をめぐる今後の議論の推移を考えるうえで参考になるだけでなく、政治家の教育に対する強い問題意識が伝わって来るはずだ。

【外部リンク】
「外国人労働者受け入れと日本語教育」(ひつじ書房、田尻英三編)
「教育機会確保法の誕生―子どもが安心して学び育つ」(東京シューレ出版、フリースクール全国ネットワーク・多様な学び保障法を実現する会編)

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

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6月
12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
6月 12 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
6月
29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
11月
22
7:00 PM 教室内談話: 学習者間相互交流とL... @ オンライン(ZOOM)
教室内談話: 学習者間相互交流とL... @ オンライン(ZOOM)
11月 22 @ 7:00 PM – 12月 13 @ 8:30 PM
※この講座の内容は2022年実施分に準じます。 教室内談話: 学習者間相互交流とL2学習を考える 学習者同士が互いに話し合う活動は、近年の外国語(L2) 教室には不可欠です。また、学習者同士 が学習言語で対話する活動の意義やL2 習得における効果は、外国語教育において興味深いトピッ クの1 つです。本講義では第二言語習得理論を適宜参照しながら、外国語教室で行われる学習者同 士の対話の意義や先行研究で明らかになっている効能、より効果的な実践法や課題と展望について 考察を深めます。 【全4回】 日程: 第1回:2024年11月22日(金)19:00-20:30 第2回:2024年11月29日(金)19:00-20:30 第3回:2024年12月6日(金)19:00-20:30 第4回:2024年12月13日(金)19:00-20:30 内容: 第1回:「学習者同士のL2 対話」と第二言語習得理論 第2回:「学習者同士のL2 対話」と第二言語学習 第3回:「学習者同士のL2 対話」と教師 第4回:「学習者同士のL2 対話」とこれからのL2 指導 【受講料】9,000円(税込)※1講座のみお申込み:2,500 円(税込)
11月
30
1:00 PM ビジネス日本語研究会 第38回 研究... @ オンライン(ZOOM)
ビジネス日本語研究会 第38回 研究... @ オンライン(ZOOM)
11月 30 @ 1:00 PM – 5:00 PM
テーマ:ビジネス日本語における「チームワーク」を考える 現在、外国人材を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。日本で働く外国人労働者の増加、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度の創設などにより、インクルーシブな職場づくりの重要性が増しています。そこで、第38回ビジネス日本語研究会では、「チームワーク」をテーマとします。経済産業省が提唱した「社会人基礎力」のひとつである「チームで働く力」を、インクルーシブな職場ではどのように考えるのか、日本企業で採用に関わる方々のお話も伺いながら、「チームワーク」について、様々な視点から考えます。当日は多くの方にご参加いただき、活発な議論、意見交換が行われることを期待しています。 また、併せて研究発表を実施いたします。

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