【寄稿者:宮崎計実】

2017年、8月6日、AYALA CENTERのイベント会場で、日本の外務省、観光庁、フィリピン観光省などが後援する国際紅白歌合戦が行われた。紅白とはいっても男女で別れるのではないが、日本人は外国語で歌い、日本人以外の人たちは日本語で歌う、お互いの文化を尊重する歌の国際交流イベントとなっている。このイベントは、東日本大震災のあった2011年、本国に帰ることの出来ない日本定住の外国人と被災した日本人を励まそうと始まったが、その後毎年、東京で行われているが、海外での開催はセブが初めて。

どうして、セブだったのか?

私が、セブに来たのは4年前。たまたま、ご縁のあった高校の英語研修の運営企画をすることになり、英語学校の視察に来た。英語の歌を1曲、発音や歌詞を含め完全マスターし、最終日には一般の人たちの前で発表するプログラムを作った。緊張の中、迎えた発表会だったが、彼らの堂々と歌う姿はとても頼もしく見えた。そして、その彼らを励まそうとフィリピンの先生たちが、隠れて練習していた日本語で歌を歌ってくれた。最後は、日本の高校生とフィリピンの先生たちが一緒になり、英語と日本語で歌う感動的なステージになった。仕事をサボって、拍手を送るフィリピンの人たちのおおらかさもあって、単なる発表会ではなく、心のこもった立派な『日本とフィリピンの歌の交流会』となっていた。その時、将来は、セブで国際紅白歌合戦を開催しようと心に決めた。

いよいよ、現実になったセブ島開催

2016年東京での開催に、セブで働いていた日本人女性と一緒に、CEBU MUSIC LEARNING CENTER(CMLC)で歌を教えていた中原さんが、一参加者として参加した。そして、イベント終了後、中原さんと2,3度ミーテイングを重ね、CMLCをパートナーになってもらって開催することを決心した。東京でもフィリピンの人たちは、イベント全体を盛上げてようと協力的だったので、セブでも何とかうまく行くのではないかと思った。イベントの公共性、CMLCの実績が認められ、運よく、ALAYA CENTERの協賛が得られた。そして、中原さんはじめ、CMLCのスタッフやボランテイアの人たちのサポートで、準備も進んでいった。

私は、日本からの間接的なサポートが主で、実質的な運営は、オーディションの立会いからであった。40組の申込があり、その熱気は日本以上であった。感動して、歌っている参加者の顔を見れないこともあった。選ばれたと連絡をもらって、涙ながらに喜んでいる参加者もいたのは印象的だった。そして、後日、選ばれた参加者とのミーテイングを迎えたが、その際に、確認したのは、このイベントは優劣を競うものではないということ。あくまでも、CONTESTではなく、FESTIVALであることだ。これは、2011年の1回目の開催時から7年間一貫してのことだ。もちろん、個人賞はあるが、本当に大切なのは、日本人は外国語で歌い、日本人以外の人は日本語で歌いお互いの文化を尊重することである。

8月6日、いよいよ、本番を迎える

紅白チームに分かれて、他のメンバーにも声援を送る雰囲気を中原さんや司会の人たちがうまく作ってくれた。出演者がお互いを励ましあう姿を見ることはとても微笑ましかった。フィリピンと日本の国歌斉唱からはじまり、22組がイベントを盛上げた。MYTVのテレビの撮影もあり、出演者もそのステージの雰囲気を楽しんでいた。フィリピンの人たちが、日本の歌をあんなに感情を込めて歌っている姿を見るのは日本人にとっては、とても嬉しいものだった。日本人の参加者は、長くセブに暮らす人たちが多かったが、皆さんバックグランドが様々で、ビザヤ語で歌う人までいて、セブの人たちからも喝采を浴びていた。ゲストの日本舞踊やセブで有名なクアイアー、孤児たちの『翼をください』なども感動的だった。優秀賞には、秦基博の曲を弾き語りで歌った、中華系フィリピン人の Kenichi Uangさんが選ばれた。セブ-東京往復航空券を副賞として受け取った彼は、フィリピン代表として、10月9日の東京開催にも参加する。他の出演者の歌のレベルも相当なもので、誰が賞をとってもおかしくない内容だった。歌のレベルは1回目からすでに東京を超えた。

審査員をつとめてくださった、ホテルオーナーの辻さん、日本語が流暢なアレックスさんもまた来年も楽しみだねといってくださり、このイベントはこれからも続いていくであろうと感じた。

日本人会の皆様はじめ、日本観光庁からの後援をサポートしてくださった移民情報機構の石原代表、また様々なご支援、ご助言を下さった皆様には、心より感謝の気持ちを申し上げたい。また、来年も、セブで関係者の皆様にお会いできることを楽しみにしている。

国際紅白歌合戦フェイスブックページ
https://www.facebook.com/RedWhiteSinging/

宮崎 計実(みやざき・かずみ)寄稿者

投稿者プロフィール

国際交流団体グローバルコミュニティー運営。Kensington School of Business ビジネスコース修了。韓国釜山で日本語教師を経験した後、海外ウエディング、外国人財企業に新規事業の責任者として参画。2009年独立。多言語情報誌『Globalcommunity』(グローバルコミュニティ)を発行し、国際人財の採用代行、インターンシップの企画運営、国際イベントの運営に携わる。

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

4月
19
10:00 AM 凡人社オンライン日本語サロン研修... @ オンライン
凡人社オンライン日本語サロン研修... @ オンライン
4月 19 @ 10:00 AM – 11:00 AM
凡人社オンライン日本語サロン研修会『実践に基づく「やさしい日本語」の論点整理』 [日 時] 4月19日(土)10:00~11:00(オープン 9:40)※日本時間   [対 象] 日本語教育関係者、多文化共生に関心のあるすべての方   [定 員] オンライン:250名 ※ 先着順、定員になり次第締め切ります   [参加費] 無料 ※ 要予約、前日(4/18)17 時までに招待 URL を送ります   [講 師] 岩田 一成 先生(聖心女子大学)   [内 容] 『やさしい日本語ってなんだろう』(ちくまプリマー新書)を解説します。 10 年以上実践活動に関わって来て、まだまだ一般の人に「やさしい日本語」の理念は広がっていないなあと感じています。 病院関係者は英語志向が強いですし、学校のお知らせは規範に則って冗長なあいさつが冒頭部分を占領しています。 そして国や自治体の文書は細かい・抽象的・長い・硬い…といろいろなクセがあります。 これらは場面別にストラテジーを練る必要があると考えています。その際に大事な論点がいくつかあります。 ・「やさしい日本語」は話し言葉と書き言葉で別物である ・悪文追放は本来「やさしい日本語」運動とは無関係である ・メッセージの内容や社会制度が文章に強く影響を与える そんなお話をしたいと考えています。   [お問い合わせ・お申込み] 主催:凡人社 お問い合わせ・申し込み先(担当:凡人社/坂井) E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp   ※ 下記お申込みフォームかメールでお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「オンライン日本語サロン研修会(4/19)」と入れて、本文にご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。 お申込みフォーム→https://forms.gle/8A4mTHwVKRaUG3Y39
4月
27
4:00 PM オンライン読みもの作成入門講座 @ オンライン
オンライン読みもの作成入門講座 @ オンライン
4月 27 @ 4:00 PM – 7:00 PM
オンライン読みもの作成入門講座 概要 NPO多言語多読が作成した多読用読みものがどうやって作られているかを知り、実際に小グループで作る体験をしていただきます。初級学習者と中級学習者向けの2つの読みもののリライトを扱います。 ≫ 過去の報告を読む 講座の内容 多読用読みものの現状 多読用読みもののレベル分けについて 求められている題材とは? 初級向け、中級向けの多読用読みもの作成体験 作成した読みものへのフィードバック ※内容は参加者に合わせて変更することがあります 参加対象者 多読用読みもの作りに興味をお持ちの方 多読授業をやっている方で、ご自分の現場に合わせた読みものを作成したい方 NPO多言語多読の読みもの作りに参加したいとお考えの方 基本的に多読について知識がある方を対象にしていますが、多読について知識がない方は事前にご相談ください。
5月
16
5:00 PM 【教員対象オープン講座】中高生の... @ オンライン
【教員対象オープン講座】中高生の... @ オンライン
5月 16 @ 5:00 PM – 6:30 PM
日本語探究に関するレクチャーと「中高生日本語研究コンテスト」についての説明を行います。 次のような方におすすめです! ・「中高生日本語研究コンテスト」に関心をお持ちの中高・特別支援・義務教育学校の先生。 ・探究を担当されていて、生徒に様々なコンテストを紹介している先生(教科不問)。 ・日本語好きな生徒を担当している先生。 講師:田中 牧郎(明治大学)/ 村上 敬一(徳島大学)/ 又吉 里美(岡山大学)/ 岩城 裕之(高知大学) お申し込み:https://forms.gle/x8FvkXyzXAZDpR4n7 コンテスト専用サイト:https://www.junior-jpling.org/

注目の記事

  1. 移民政策の先駆者・故坂中英徳さんを偲んで 第五話 2050年の「ユートピア」 元東京入管局長の…
  2. 主権国家である以上、国境管理をおろそかにすることはできない。その重責を担うのが出入国在留管理…
  3. 新年を迎えて 2024年は日本語教育の大変革の年 日本語教師は新たな自己改革を 2024年…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate