「基本法」の骨子案に基づき論点を明らかに――日本語議連事務局次長の里見隆治氏が講演で
- 2017/10/4
- 日本語議連
- グローバル人材, 井上洋, 全国各種学校日本語教育協会, 吉岡正毅, 坂東真理子, 堀道夫, 大日向和知夫, 小林光俊, 日本語教育, 日本語教育推進基本法, 里見隆治
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日本語教育推進議員連盟(日本語議連)の事務局次長で公明党参院議員の里見隆治氏が2日、都内で開いた一般社団法人全国各種学校日本語教育協会(堀道夫理事長)主催の研究セミナーで講演し、日本語教育推進基本法案の骨子案を示しながら、日本語議連として今後、議論すべき論点などを提示した。この中で日本語議連が制定を目指す基本法の輪郭が明らかにされた。日本語議連は衆院解散・総選挙後に活動を再開し、骨子案をもとに基本法制定に向けて議論を詰めるものとみられる。
研究セミナーは、先に発足した全国各種学校日本語教育協会のお披露目のイベントとして開かれた。「これからの日本語教育と外国人留学生の人材活用を考える――“日本語教育推進基本法”制定に向けて」がテーマ。講演のほか、「グローバル人材の育成とこれからの日本語教育」と題したシンポジウムも開かれた。
講演の講師は当初、日本語議連事務局長で自民党前衆院議員の馳浩氏が予定されていた。しかし、衆院解散・総選挙で馳氏が地元・石川県で選挙準備に追われる事態となり、急きょ里見氏が代役を務めることになった。
里見氏が提示した骨子案(PDFで別掲)は、議連内に設置された立法チームの中川正春座長(日本語議連会長代行)の「試案」で、今後の議論のたたき台になるもの。それによると、骨子案では「第一 総則」「第二 基本方針」「第三 基本的施策」「第四 日本語教育推進協議会」の4章で構成。総則には「目的」「定義」「基本理念」が盛り込まれている。基本法が制定されれば、政府内で責任官庁が明確になり、日本語教育に関する施策を総合的に推進するための方策が示される見通しだ。
里見氏は講演で、今後の議論の焦点となるとみられる「基本的施策」について、議連内の議論をはじめ、関係機関や団体から寄せられた意見や要望などをもとに論点を示した。「第四 基本的施策」には、日本語教育の①普及推進②質の保証③調査研究――の3項目を列記。これに関連して里見氏は日本語学校について▽日本語教教育の専門機関として位置付けてほしい▽所管官庁を明確にしてほしい▽留学生の在留管理への協力について日本語教育機関の責務を明確にしてほしい――などの要望があったと述べたうえで、「日本語教育機関に法的根拠を与える。所管官庁を決める、こうした点について方向性を法案で定められないかという議論をしている」と述べた。
また、日本語教育の質の保証に関する施策については、▽人材不足に対して、必要な資質、能力、キャリアパスを明らかにしてほしい▽一定の基準や指針を設け。資格化をしてほしい▽待遇改善を図ってほしい▽研修について基準や指針を設けてほしい▽レベルに応じた教材の開発をしてほしい▽就労のための人材育成、プログラムの開発が必要ではないか――などの声があったという。
さらに里見氏は日本語教育推進協議会について、日本語教育を文部科学省・文化庁と外務省とだけでなく、法務省、厚生労働省、総務省、国土交通省など多くの省庁が一体となって総合的に推進するための機関として紹介。すべてに責任を負う所管官庁については、「これからの検討課題であり、議連の中にいろいろな意見がある」と述べるにとどまった。ただ、国内と国外(の日本語教育)は統一しにくいのではないか」とも述べ、文部科学省と海外の日本語教育に携わる国際交流基金を所管する外務省を中心にどのような枠組みにするのが適当か、今後、議論をしていくとの考えを示した。
日本語議連が目指す基本法の制定は、来年の通常国会以降になるとみられるが、議連の活動が後押しする形で、政府は6月に閣議決定した未来投資戦略2017と骨太の方針2017にそれぞれ初めて「日本語教育の充実」という文言を盛り込んだ。里見氏は、政府が日本語重視の姿勢を示したことを受けて文化庁が来年度予算の概算要求の中で「外国人に対する日本語教育の推進」の事業費を前年比約1.5倍の3億2,500万円に増額したことを指摘し、すでに議連の活動の「効果」が表れているとアピールした。
この後、行われたシンポジウム「日本語教育推進基本法の制定に向けて」では、坂東真理子昭和女子大理事長、井上洋日本経団連前参事、小林光俊全国専修学校各種学校総連合会会長、吉岡正毅全国日本語教師養成協議会代表理事、大日向和知夫日本語学校ネットワーク代表理事の5人がパネリストとして意見を述べた。(了)