<やさしい日本語>はリアルタイム翻訳時代の必須スキル
- 2017/10/26
- 時代のことば
- やさしい日本語, リアルタイム翻訳, 自動翻訳
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【寄稿者:吉開章】
リアルタイム自動翻訳が変える、コミュニケーションの形
Googleは10月4日、「翻訳するヘッドフォン」、Google Pixel Budsを発表した。耳に差し込んだまま、40言語を自動翻訳する。
A few new things made by Google. Meet the new Google Pixel 2, Google Home Mini, Pixelbook and Pixel Buds. http://store.google.com Some products coming soon.
また日本のメーカーであるソースネクストは10月23日に世界50言語を翻訳する「POCKETALK」を発表している。
言葉の壁をなくす、通訳デバイス「POCKETALK」|ソースネクスト
https://www.sourcenext.com/product/pocketalk/
POCKETALK は、外国語が話せなくても対話できる、超小型の通訳デバイスです。対応する言語は50以上。英語はもちろん、中国語、韓国語、フランス語からペルシャ語まで通訳します。|パソコンソフトからAndroid、iPhone、iPadアプリまで。ソースネクストなら人気ソフトが勢ぞろい。ダウンロードしてすぐ使えます。
自動翻訳に欠かせないのが、音声認識技術だ。 Google Home、Amazon Echoなど、音声で操作するデバイスが部屋の中にも入ってくる。キーボードをタイプするのではなく音声で入力するのが当たり前の時代がすぐそこまで来ている。
今後異言語間のコミュニケーションは、このような翻訳デバイスを使うことが前提となっていくだろう。このような近未来において、日本で外国のお客様を迎える時のコミュニケーションはどのように変わるだろうか。
まず外国のお客様は「大事な情報はできるだけ多く、正確にほしい」と思うようになるだろう。日本人・お客様の共通言語を使い、どちらか低い方の言語能力の範囲で情報を提供する時代は終わろうとしている。
そしてお客様は日本人に「翻訳機が分かる日本語を話してほしい」と考える。「あなた日本人なんでしょう?ちゃんと日本語話してください」とクレームが出るかもしれない。ましてや片言英語は翻訳機の敵でしかない。
日本人の日本語は、文脈、すなわち話している言葉以外の情報によるところが多い。特に「自分」や「相手」に関する言葉はたびたび省略され、文末も曖昧にしがちだ。何かお願いする時に長い敬語を使っても、翻訳では混乱するだけである。同音異義語も、音声から翻訳する場合深刻な問題となる。
翻訳機の究極の敵は、なんといっても方言である。全国の地方に外国人のお客様が押し寄せている。豊かな方言を楽しむ外国人もいるだろうが、説明などでは方言が障壁になる。これまでは片言英語や通訳で対応してきたが、今後は一般的な日本語で話すことが求められるだろう。
<やさしい日本語>こそ、おもてなしの必須言語に
翻訳機がわかりやすい日本語、それは<やさしい日本語>そのものである。
印刷物やWebページなど多言語翻訳の観点での<やさしい日本語>の有効性はこれまでも指摘されており、2020年オリパラ大会に向けた多言語対応協議会も
今、期待を集めている「機械翻訳」においても、いったん分かりやすい日本語に直してから外国語に訳した方が意味の通る訳文になります。「やさしい日本語」は、そのような効果も期待されます。
と書いている。「やさしい日本語」について | 2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた 多言語対応協議会ポータルサイト
<やさしい日本語>はこれまで行政や公共施設が中心となり、情報の書き換えや発信の分野で発展してきた。しかしリアルタイム翻訳時代には、<やさしい日本語>が個人のスキルとして注目される。特に観光の現場では、望ましいというレベルではなく、必須スキルとして求められるようになるだろう。
やさしい日本語ツーリズム研究会は、日本語学習者を想定した「なかよくなるための<やさしい日本語>」というコンセプトで活動してきた。しかし時代の流れは想像以上に速く、日本語を学習したことがない人に接する時も<やさしい日本語>の有効性、いや必要性が明らかになってきたようである。
10月24日に、大阪外食産業協会に招かれ、居酒屋・飲食店関係者の幹部の方々に<やさしい日本語>について話をさせていただいた。講演で自動翻訳技術について紹介し、
「毎日会う外国人従業員の方には、毎日関西弁で話してください。そちらの方が仲良くなれます。でも、お店に来る外国のお客様には、関西弁を話してはいけない時代が来るかもしれません。片言英語より<やさしい日本語>が大事になるでしょう。」
と言ったところ、「んな、あほな」と突っ込んだ方は皆無だった。