「日本国籍を持ちながら日本語ができない子供が増えている」との指摘も――総選挙後初の日本語議連の総会

日本語教教育推進議員連盟(河村建夫会長)の第9回総会が29日、衆院第一議員会館で開かれた。先の衆院解散・総選挙を受けて初めて開かれた総会で、日本語議連の再出発にあたり新たな役員人事案が示されたほか、来年度予算の編成を前に文部科学省、文化庁などが日本語教育関連の予算要求の状況を報告した。また、専門家を招いてのヒアリングがあり、公益社団法人・国際日本語教育普及協会(AJALT)の関口明子会長が日本語教育システムの構築に関する提案を行った。
 
この日は河村会長、中川正春会長代行が所用で出席できず、馳浩事務局長がまず、役員人事について河村会長に一任することを提案、了承された。役員人事に大きな変更はないとみられるが、年明けの通常国会の際に開かれる次期総会で正式に決定される見通しだ。
 
来年度予算要求に関しては、文部科学省、文化庁、厚生労働省、経済産業省、外務省の5省庁から報告があった。いずれも前年度に比べて増額されており、日本語議連の議論を反映した「議連効果」が出ているとも言えそうだ。
 
AJALTは今年2月に40周年を迎え、ビジネス日本語から外国人児童の教育まで多様な日本語教育を先駆的に実践してきた。関口会長はその取り組みを報告するとともに、過去の実践を踏まえて長期的な観点から①定住外国人のための日本語教育支援システムの構築②調査による日本語教育の実態把握とその検証③子供たちへのJSL(第二外国語としての日本語)教師資格制度の確立――を提案した。いずれも日本語議連として突っ込んだ議論をすべき課題だ。


 
また、議論の中で愛知県安城市など外国人が集住する地域を選挙区(愛知13区)とする大見正議員から地元の現状報告と提案があった。大見議員によると、トヨタの下請け工場など外国人を雇用する中小の製造業が多く、しかも4次~6次の下請けが派遣会社を通じて外国人を雇っている。外国人の集住地域では全校児童の6割が外国籍の小学校もあり、家庭と学校の連絡すら付かないケースもあるなど先生が多くの苦労を強いられているという。大見議員は「産業界と学校が連携できる仕組みや産官学が協同できるシステム」の必要性を訴えた。
 
大見議員の発言を契機に議論が大きく展開。オブザーバー参加の日本語教育学会の石井恵理子会長は外国人児童、生徒の日本語教育は言語発達の段階を踏まえた対応が必要だと強調し、「外国人の母親がカタコトの日本語で育てたために、母語も日本語もできない子どもが増えている」と指摘した。そのうえで「そういう子供は就職もできずに日本にいることを選択せざるをえなくなる。それは納税者になれないということ」と語り、国益が損なわれる事態になると警鐘を鳴らした。


 
これに関連して大見議員は、国際結婚などで生まれて日本国籍を持ちながら日本語ができない児童が増えているとの認識を示し、「これは国の責任としてどうするかだ」と政府として対応策を検討するよう促した。
 
関口会長は、だからこそAJALTがJSL,第二外国語としての日本語教育の教師の育成に取り組んでいるとし、JSL教師に公的な資格を付与するよう求めた。
 
馳事務局長は日本語議連の在り方について、日本語教育推進基本法の制定を目指す一方で、日本語教育に関して幅広い議論や要望を受ける「プラットフォームとしての役割」を考えていると述べた。また、立法チームを再スタートさせ、法案の原案作成の調整を進めていくとし、来年1月の通常国会開会後の総会では関係団体の意見聴取を通じて課題や問題をさらに議論していく意向を示した。

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令和6年度 国際化市⺠フォーラム ... @ オンライン(ZOOM)
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今年度も国際化市⺠フォーラム in TOKYOを開催します︕ これまで15年以上にわたり例年2⽉に開催しているイベントです。今年度のテーマは「東京がめざす多文化共生、一歩先へ」です。 2024年10月、都内の外国人住民は約70万人、人口の4.9%を超えました。外国につながる人々も含めると、その総数は計り知れません。私たちの身の回りでは、多くの外国人が日本社会の一員として生活し、活躍しています。災害対応や子どもの教育など、在住外国人を取り巻く課題は、日本社会の課題でもあります。今年度の国際化市民フォーラム in TOKYOは、個々のテーマに焦点を当てながら、東京にふさわしい多文化共生の姿について、皆さんと一緒に考えます。 どなたでもお申し込みいただけますので、ぜひご参加ください。 ●開催日時 2025年2月15日(土) 【A分科会】10:00~12:30 【B分科会】14:30~17:00 【C分科会】14:30~16:30 ●開催方法 オンライン(ZOOM) ●定員   各分科会 250名 ●詳細・申込  https://tabunka.tokyo-tsunagari.or.jp/forum/apply.html 締切:2025年2月9日(日) ※定員となり次第、締め切らせていただきます。 ●参加費   無料 ●問い合わせ 公益財団法人東京都つながり創生財団 多文化共生課 メール:forum@tokyo-tsunagari.or.jp TEL:03-6258-1237 ●各分科会内容 【A分科会】 市民が支える多文化コミュニケーション ~コミュニティ通訳の役割と地域市民ができること~ <司会進行> 松井 和久 氏  独立行政法人国際協力機構 東京センター 市民参加協力第一課 <基調講演> 飯田 奈美子 氏 立命館大学衣笠総合研究機構 専門研究員 <パネリスト> 杉田 理恵 氏 (一社) 多文化社会専門職機構 認定事業 相談通訳者認定者 高田 友佳子 氏 特定非営利活動法人 国際活動市民中心 コーディネーター/クリニカルソーシャルワーカー 藤原 紀子 氏  特定非営利活動法人 たちかわ多文化共生センター 登録語学ボランティア 【B分科会】 外国につながる子どもたちが活躍できる東京を目指して ~小中学校の学びが未来を拓く~ <司会進行> 岩野 英子氏、小野 千穂 氏、古川 美由紀 氏 西東京市多文化キッズサロンコーディネーター <事例発表> 青山 弘子 氏  江戸川区立小岩小学校日本語学級 主任教諭 田中 阿貴 氏  港区立六本木中学校日本語学級 主任教諭 中村 夏帆 氏  岩倉市立南部中学校 教諭(日本語担当) 我彦 有希子 氏 八王子市立南大沢小学校日本語学級 主任教諭 【C分科会】 多文化共生と防災 ~災害に備える共助の力~ <司会進行> 源 亮子 氏 独立行政法人国際協力機構 東京センター 市民参加協力第一課 <基調講演> 楊 梓 氏  阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター リサーチフェロー <事例発表> 奥田 裕 氏、長尾 薫 氏 東京都住宅供給公社 公社住宅事業部 公社管理課 柏村 貴也 氏 中野区 総務部 防災危機管理課 田島 実恵 氏 中野区国際交流協会 姜 秀英 氏  中野区外国人防災リーダー 主催:国際交流・協力TOKYO連絡会、公益財団法人東京都つながり創生財団 共催:東京都 後援:独立行政法人国際協力機構(JICA)、一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR) ※国際交流・協力TOKYO連絡会とは、都内の国際交流協会や外国人支援団体等が加盟するネットワークで、(公財)東京都つながり創生財団が事務局を務めております。 ◆開催までの企画・運営の様子をまとめた「市民フォーラム準備レポート」もご覧ください。 https://tabunka.tokyo-tsunagari.or.jp/log/shiminforum/ ◆本件は、東京都多文化共生ポータルサイトSNSでも情報発信しております。 ご興味のある方がいらっしゃいましたら、周りの方にもぜひお伝えいただけますと幸いです。 ・X:https://x.com/tmtabunka/status/1876460159977074875 ・Facebook:https://www.facebook.com/tokyo.tabunkaportal/posts/pfbid02sET78zvqcBdiv6QPGGPNUoHs2NB9wGnqcaacfRfDWJZkSVaGz9WRohdcNNfqFGsLl?ref=embed_page
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