中国人の日本語作文コンクール

近年の日本における日本語学校の急増に伴い、日本語学校へ留学する学生も増加し、国内の日本語教育に注目が集まっています。しかしながら、日本に留学をした経験のない海外の日本語学習者の日本語力については、それほど知る機会は多くありません。そこで、日中交流研究所が毎年開催する「中国人の日本語作文コンクール」の受賞作品等を特集し、海外に住む日本語学習者の日本語力や、その視点を紹介していきます。

 

最優秀賞 テーマ「中国の『日本語の日』に私ができること」

「日本語の日」に花を咲かせよう

河北工業大学 宋妍

去年11月、日本人の先生と大学の食堂へ食べに行ったときの出来事だ。お店の前で、先生と日本語でやり取りしていると、中国人の調理師さんが興味津々でこちらをジロジロ見ていて、突然「あのう、日本人ですね。この牛肉ラーメンが一番美味しいですよ。お勧めですよ」「こちらでゆっくりお待ちください。出来上がったら、お呼びしますよ」と親切にゆっくりとした中国語で先生に話してくれた。以前は珍しい光景だったが、昨今このような優しい対応が増えている現状に、先生は驚きというよりは、むしろ喜びを感じているように見えた。

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一等賞 テーマ「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」

日本人に伝えたい中国文化のソフトパワー

浙江工商大学 邱吉

 

私が日本人に伝えたい中国文化のソフトパワーは漢方医学だ。

私の出身は中国の広西チワン族自治区だ。うちはもともと地元の漢方に関わる家柄で、先祖が残した優れた医術を代々受け継いてきた。

しかし、時代が変わって、西洋医術に人気がどんどん集まり、その影響から漢方医学は衰退してしまった。父は後継の役目を諦め、普通の会社員になった。

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一等賞 テーマ「忘れられない日本語教師の教え」

走り続けるということ

中南財経政法大学 張君恵

 

 

「私の言葉を世に届けたいというキミの気持ちは、そんなものだったんだね」。中村先生の言葉が心に突き刺さった。それとともに、この半年のできごとが頭の中に、次々に浮かんでくる。

私は昨年の第12回作文コンクールで、思いがけず一等賞をいただいた。段躍中先生が言うとおり、一編の作文が私の人生を劇的に変えた。一等賞のおかげで、日本大使や上海総領事をはじめ、たくさんの方々と出会い、私の世界はどんどん広がっていった。

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一等賞 テーマ「中国の『日本語の日』に私ができること」

中国の「日本語の日」に私ができること

青島大学 王麗

 

「麗ちゃん、来週青島へ旅行に行くんだけど、よかったらちょっと案内してくれない?」

先日、日本人の友達A君から旅行の案内を頼まれました。「いろんな観光地を回りたいけど、中国語が分からなくてね」と、私をたよってきたようでした。

実は、日本語を勉強してからの3年間、私は何度もこのような依頼を受けました。「観光地に日本語の説明看板がほとんどないから、ただ見るだけで、この建物は何のために建てられたのか、この彫刻にはどんな意味があるのか、よく分からない。説明してくれる人がいると本当に助かるよ」。一緒に青島を観光していた時、A君がそう言いました。

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一等賞 テーマ「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」

里美ちゃんへの返事 ――中国の新しい魅力「環境保護の価値観」

上海理工大学 黄鏡清

 

拝復 里美ちゃん

お久しぶり! 最近どうしてる? 別れてもう半年経ったね。去年九月、大学の短期プログラムで来ていた里美ちゃんと一緒に過ごした日々が、昨日のことみたいだよ。一緒に授業を受けたり、食事したり、上海のあちこちを歩き回ったり、ほんとうに楽しかったよね。

里美ちゃんはこの間のメールの中でこんなことも言ってたね。

「中国って本当に広い。歴史的景観も多いし、料理も地方色が豊かだから、あちこち行ってみたいな」。里美ちゃんがそう言ってくれて、私もうれしい。でも里美ちゃんは町の人々のよくないマナーや習慣なども見ていたから、そのことで中国へのマイナスの印象を持ってしまったよね。

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一等賞 テーマ「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」

故きを温ねて新しきを知る

東北大学秦皇島分校 林雪婷

 

カンカン、コンコン、ダダダダン。

剣がぶつかり、影が舞う。足音が響き、棒と槍をかいくぐる。

私の故郷、広東省の掲陽市にある伝統舞踊がこの「英歌舞」だ。日本の時代劇の殺陣や中国拳法の演舞にストーリーをつけたものと言えば想像しやすくなるだろうか。そのストーリーは日本でも有名な水滸伝だ。

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凡人社オンライン日本語サロン研修会『実践に基づく「やさしい日本語」の論点整理』 [日 時] 4月19日(土)10:00~11:00(オープン 9:40)※日本時間   [対 象] 日本語教育関係者、多文化共生に関心のあるすべての方   [定 員] オンライン:250名 ※ 先着順、定員になり次第締め切ります   [参加費] 無料 ※ 要予約、前日(4/18)17 時までに招待 URL を送ります   [講 師] 岩田 一成 先生(聖心女子大学)   [内 容] 『やさしい日本語ってなんだろう』(ちくまプリマー新書)を解説します。 10 年以上実践活動に関わって来て、まだまだ一般の人に「やさしい日本語」の理念は広がっていないなあと感じています。 病院関係者は英語志向が強いですし、学校のお知らせは規範に則って冗長なあいさつが冒頭部分を占領しています。 そして国や自治体の文書は細かい・抽象的・長い・硬い…といろいろなクセがあります。 これらは場面別にストラテジーを練る必要があると考えています。その際に大事な論点がいくつかあります。 ・「やさしい日本語」は話し言葉と書き言葉で別物である ・悪文追放は本来「やさしい日本語」運動とは無関係である ・メッセージの内容や社会制度が文章に強く影響を与える そんなお話をしたいと考えています。   [お問い合わせ・お申込み] 主催:凡人社 お問い合わせ・申し込み先(担当:凡人社/坂井) E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp   ※ 下記お申込みフォームかメールでお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「オンライン日本語サロン研修会(4/19)」と入れて、本文にご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。 お申込みフォーム→https://forms.gle/8A4mTHwVKRaUG3Y39
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【教員対象オープン講座】中高生の... @ オンライン
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