和田敦彦・早大教授らがベトナムの日本語資料コレクションの全体像を解明
早稲田大学教育・総合科学学院の和田敦彦教授の研究グループが東南アジアの日本語資料の所蔵状況の調査プロジェクトに取り組み、ベトナムに未調査の日本語資料約1万1000点が保管されていることが分かった。詳しく調べた結果、和装本が4084点、洋装本が5642点にのぼり、戦時期も含め日本の文化活動を知るうえで貴重な資料になるという。早稲田大学が同大学のホームページで明らかにした。
同ホームページによると、日本の書物は世界中に広がっており、欧米では多数存在する日本語蔵書の研究が進められてきた。しかし、東南アジアに関してはほとんど調査も行われておらず、今回、和田教授らが国際交流基金などの協力を得て調査、研究を行った。
ベトナムで見つかった1万1000点の日本語資料のうち、和装本は東南アジアでは最大規模の数だという。江戸時代から明治期にかけて刊行された版本が多数を占めており、「類聚国史」や「大日本史」といった日本史領域の文献が含まれていた。また、哲学、思想の分野では本居宣長や平田篤胤ら神道・国学の著述が大部分を占めていた。さらには能や狂言に関する資料もあった。
一方、洋装本(近代の刊行本)は、明治時代の学術書などが多く、第二次大戦中に日本がベトナムに設けたハノイ日本文化館の蔵書が含まれていた。同文化館の関連資料はほとんど残されておらず、戦時期の日本の文化活動を知るうえで、重要な資料であることが分かった。
今回の調査、研究により資料全体の目録ができたことで、ベトナムの蔵書について、より専門的な研究環境が整ったことになる。作成された目録データは、日本の国文学研究資料館のデータベースや欧州各国所蔵の日本古典籍のデータベースとも連携して活用が可能になる。このため、将来は世界各地に存在する古典籍情報を総合的にとらえた研究が進展するのではないかと期待されている。