東海地方で外国人支援団体がネットワークづくりの動き 名古屋管理局がサポート

東海地方で外国人支援団体がネットワークづくりの動き 名古屋管理局がサポート

外国人労働者の受け入れ拡大の改正入管法が4月に施行されたが、外国人が多く居住する東海地方で、外国人支援団体の間で新たな取り組みが始まった。4月25日、名古屋市の名古屋出入国在留管理局に外国人支援のNPO法人や国際交流協会など21の団体代表が集まった。管理局側と意見交換する中で、三重県の団体から外国人支援の要望を国に伝えるネットワークを作ろうという提案があり、管理局側が歓迎の意向を示した。外国人の円滑な受け入れには支援団体の協力が不可欠だが、当局が外国人支援団体の声を聴く仕組みはない。「ネットワーク構築」が、政府が目指す「共生社会」の実現に向けた第一歩になるのかどうか。

ネットワーク構築を提案したのは、三重県鈴鹿市のNPO法人愛伝舎代表理事の坂本久海子さん。意見交換会の場でこの提案を受け止め、入管当局として協力する意向を示したのは藤原浩昭局長。藤原局長は外務省出身。10年前に多文化共生の研究者や外国人支援団体と交流する外務省外国人課長時代を経験した。当時の知り合いの坂本さんとは、名古屋局長就任後には意見交換を重ねていた。

昨年12月に政府が発表した「外国人材受入れ・共生のための総合的対応策」の中には、共生社会の実現に向けて「国民と外国人の声を聴く仕組みづくり」や「外国人支援者のネットワークの構築」が盛り込まれた。そこで「国民の声」を聴きたいという藤原局長と「ネットワークを通じて政府に現場の要求を伝えたい」という坂本さんの双方の思惑が一致して開かれたのが意見交換会だった。坂本さんは地元三重県の団体に呼びかけ、愛知、岐阜、静岡の団体には各県を通じて呼び掛けてもらった。管理局長に直接意見を伝えたいと、4県のNPO法人や公益財団法人の国際交流協会、任意団体なども含め21団体が集まった。

意見交換会のあと、藤原局長と坂本さんが記者向けのブリーフィングが行われた。それによると、意見交換会では外国人児童・生徒の教育に関する国への要望をはじめ、日本語教育や多文化共生の地域づくり、外国人支援のコーディネーターの育成・配置など様々な意見や要望が出たという。また、技能実習生を受け入れている企業が実習生の日本語教育をボランティアの日本語教室に丸投げするケースが増え、現場が苦労しているとの声が複数の団体から出たという。

坂本さんが提案したネットワークづくりに関しては、各団体も前向きに受け止めたが、ネットワークの目的や活動範囲など詰めるべき点も多々あるのも事実で、各団体が参加しやすいよう、目的や連携の在り方などを今後詰める考え。坂本さんは、賛同してくれる団体を集め、今夏をメドに「ネットワーク」を立ち上げたいと語った。

藤原局長は、東海地方は外国人が集住しているが、熱心な支援団体も多く、「ネットワークを作る素地がある」との認識を示し、「役所の仕事としてはちょっと変わっているかもしれないが、(ネットワーク化は)やったことがないから意味があると思っている」と述べた。

法務省入国管理局が4月から出入国在留管理庁に格上げされたのに伴い、名古屋を含めた全国8つの地方出入国在留管理局と3つに支局には、外国人受け入れの環境整備を目的とした「受け入れ環境調整担当」の統括審査官を配置した。藤原局長は当局側の体制整備も踏まえ、「ネットワークができて現場で抱える課題を整理してもらえば、我々が窓口となって課題解決の方策を政府に伝えることができる。我々がネットワークを作れという権限はないが、発足すればその活動をサポートしたい」と話していた。

意見交換会に参加した団体は、以下の通り
公益財団法人・大垣国際交流協会▽Vivaおかざき!!▽NPO法人・多文化共生リソースセンター東海▽愛知県営住宅自治会連絡協議会・外国人と共生を考える会▽NPO法人・シェイクハンズ▽NPO法人・可児市国際交流協会▽フィリジャパアジア友の会▽NPO法人・トルシーダ▽ASFIL岐阜▽NPO法人・伊賀の伝丸▽NPO法人・ABT豊橋ブラジル協会▽公益財団法人・四日市市文化まちづくり財団▽多文化共生ネットワーク・エスペランサ▽(IPC)一宮フィリピンコミュニティ▽三河カトリックセンター(外国人サポートセンター)▽一般財団法人・日本国際交流センター(JICE)中部支所▽公益財団法人・浜松国際交流協会▽共の会▽東海日本語ネットワーク▽公益財団法人・愛知共同住宅協会▽NPO法人・愛伝舎

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