日本語教育推進に関する政府の基本方針作成に向けての「海外からの声」
- 2020/3/13
- ぷらっとニュース
- 日本語教育推進法, 日本語教育推進関係者会議
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日本語教育推進に関する政府の基本方針作成に向けての「海外からの声」
「にほんごぷらっと」にカナダ在住の高邉フレンチ 淑美さんより、「海外の親の声を聞いてください!」と題した投稿をいただきました。政府が日本語教育推進法に基づき6月にも閣議決定する日本語教育推進の基本方針の原案づくりのために設置された「日本語教育推進関係者会議」の委員19人の中に海外在住の関係者は含まれていません。高邉フレンチさんの投稿は、「自分たちの声も聞いてほしい」というメッセージです。以下、その全文を掲載させていただきます。
今後、政府は基本方針案を作成後、それを公表しパブリックコメントを募集する予定です。その際にも「にほんごぷらっと」としては、内外を問わず、コメントをいただければ掲載する方針です。
にほんごぷらっと編集部
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海外の親の声も聞いてください!
「日本語教育の推進に関する法律」の運用基本方針を決定する皆様へ
私は国際結婚で生まれた子供たちをカナダで、様々な紆余曲折を経て日本語も流暢に話せるように育てた母親です。このたび、2019年6月に公布,施行された「日本語教育の推進に関する法律」の運用基本方針が今年6月に決まると聞き、微力ながら海外定住者の声も聞いていただきたく文書をしたためましたのでお読み戴けると幸いです。
条文には、「第19条 国は、海外に在留する邦人の子、海外に移住した邦人の子孫等に対する日本語教育の充実を図るため、これらの者に対する日本語教育を支援する体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。」と明記されています。この条文によって、海外在留邦人、特に同じ日本人でありながら今まで日本政府の関心の外にあった海外定住日本人または国際結婚家庭の1.5世代または第2世代にあたる子どもの継承日本語教育にも、公的支援を得られる可能性が出てきたことはたいへん喜ばしいことだと思います。しかし、日本語教育推進関係者会議に海外定住の子どもの日本語教育に関わる人が1人も含まれておらず、2世児の日本語教育についてほとんど触れられていないことに私は大きな危機感を抱いています。
海を渡った移住者の子ども世代である1.5または第2世代に対して、親は日本語および日本文化を継承しようと涙ぐましい努力を試みます。よって彼ら2世児は親の影響を受け、日本語を話さない日系人子孫や外国人日本語学習者とはまた違った質の日本に対する愛着を持ち、高度に日本語や日本文化を継承して、真のバイリンガル・バイカルチャー人材として日本をサポートできる可能性を持っています。しかし、今まではそのような人材育成の責任はすべて親の自助努力に任されてきており、その重圧は親だけではなかなか耐え難いものとなっています。
継承日本語を使えるようになるには20年という年月が必要です。しかし、海外日系コミュニティ、それも日本語が使える人のコミュニティはたいへん小さく、海外定住2世児は日本語を習っても使う場所や機会がほとんどないため、日本語の必要性をなかなか感じることができません。また、成長して日本の大学の国費留学やJETプログラムへ応募しようとしても2重国籍者は除外という日本の対応にぶつかり、いつしか彼らも日本語から離れいくというのが現状です。私は、子どもが日本語学習を嫌がるので、親が泣く泣く子どもの日本語教育を諦めていく姿をたくさん見てきました。
何もしなければ移住者の子どもの母語(継承語)は「5歳までに消える」と言われています。しかし、親の努力と日本政府の援助を掛け合わせれば、海外に数十万人はいるだろう優秀な2世児の母語の消失を食い止め日本語習得を促進することができます。そして、将来成長した彼らが今度は日本に多大な利益を運んでくることでしょう。
私は以下のことを運用基本方針に入れていただきたいと考えます。
1.日本への国費留学とJETプログラムに2重国籍者を認める、または別枠を作る。
2.海外定住2世児のための日本語教育・日本語イベントをサポート。
3.バイリンガル教育専門家による親へのアドバイスと精神的サポート。
4.2世児の日本の小中高校への体験入学や交換留学の促進。
若者が減っていく日本が優秀な人材を確保するためには、海外定住2世児を活用することは今や避けて通れないことではないでしょうか。ぜひ、海外にいる数十万人もの金の卵の存在に注目していただきたいと思います。
2020年3月11日 カナダにて
高邉フレンチ 淑美