「にほんごぷらっと」が【「日本語教育の推進に関する基本方針」(案)への意見】を提出

「にほんごぷらっと」が【「日本語教育の推進に関する基本方針」(案)への意見】を提出

政府は【「日本語教育の推進に関する基本方針」(案)への意見】(パブリックコメント)を募集しています。これに対し、日本語教育情報プラットフォーム(にほんごぷらっと)=代表・石原 進=として、2点の意見を提出しました。以下、提出した意見を掲載します。締切りは4月24日ですが、政府に提出したパブコメを「にほんごぷらっと」に送付いただければ、締め切り後であっても掲載させていただきます

送付先は、http://www.nihongoplat.org/kiko/をご覧ください。

パブコメが基本方針案の中にどの程度、採用されるかどうか。それは政府側に判断に委ねるしかありません。しかし、日本語教育をより良き方向に推進するためには、様々な立場から多様な意見を出し合い、議論を深めることが必要だと考えます。

【意見その1】

◆基本方針案の《はじめに》に関して

[意見を述べる理由]

新型コロナウイスの感染が地球規模で拡大している中で、国境を越えた人の移動、日本国内でのイベント、会議等が厳しく規制されています。こうした中で「基本方針案」にも想定外の取り組みを盛り込むことが求められています。すでに出入国在留管理庁は、日本語教育機関に対し「オンライン授業を教育課程の一部とみなすこと」を容認し、通達しています。現実に、「教室内の日本語の授業」が行えず、日本語教育機関はオンラインを通じて授業を実施しています。こうした現状を踏まえ、基本方針の中で「オンラインによる日本語教育の検討」を盛り込む必要があると考えます。その場合、日本語教育機関の日本語教育のみならず、学校教育、就労、生活の場での日本語教育においても、オンラインによる教育の必要度が増すことは、「時代の要請」となることが想定されます。

[《基本方針のはじめへ》への意見]

以上のような認識のもと、少なくとも基本方針の趣旨を包括する「はじめに」の中に「オンラインによる日本語教育の普及を検討する」等の文言を付加することを提案します。第2章の「日本語教育の推進に関する事項」にも盛り込む必要があると思いますが、とりあえず「はじめに」への提案とさせていただきます。

【意見その2】

◆第2章 日本語教育の推進の内容に関する事項

1 日本語教育の機会の拡充

  • 国内における日本語教育の機会の拡充

ウ 外国人等である被用者等に対する日本語教育に対する意見について

[意見を述べる理由]

2018年12月の入管法改正の大きな目的は、労働力の不足に対応するための外国人材の受け入れの拡大です。そのために新たな在留資格「特定技能」が創設されました。だとするならば、外国人材を雇用する企業の果たすべき責任は大きい。日本語教育推進法には第6条に「事業者主の責務」が書かれ、基本方針案にも「職務に関連した日本語及び専門分野に関する日本語や生活に必要な日本語を学習する機会の提供等の措置を講じる」と記しています。外国人を雇用する側が「受益者」である以上、日本語教育に対する責務を負うのは当です。しかし、技能実習生を受け入れて企業がボランティアの日本語教室に実習生を送り込むケースが散見されます。自らコストを負担することもなく、自治体やボランティアに「丸投げ」しているわけです。教材やコピー代の負担増に悲鳴を上げているボランティアが増えています。日本語教育推進関係者会議に経団連と日本商工会議所の担当者が呼ばれ、ヒアリングが行われましたが、当事者意識の希薄さに驚きを禁じ得ませんでした。また、新型コロナウイルスの感染拡大で企業が外国人従業員の切り捨ても始まっています。そうした中にあっても、政府が「共生社会の構築」の旗を振る以上、共生社会の重要な構成員である企業の「日本語教育に関する社会的責任」も大きいと考えます。

[第2章1-(1)―ウに対する意見]

ウの「具体的施行例」には「地域における日本語教育及び先進的取り組みを支援する」や「職務に関連した専門的な日本語の習得を実施する場合の支援を行う」――などとあります。地域のおける日本語教育に対しても「より積極的な支援」が必要です。また「専門的な日本語の習得」は事業の業績の向上に必要なものであり、主体的に関わるべき課題であると思われます。事業者の「責務」をより明確にすべく表現を検討するよう意見をのべさせていただきます。

にほんごぷらっと編集部にほんごぷらっと編集部

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の編集部チームが更新しています。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

6月
12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
6月 12 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
6月
29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
11月
22
7:00 PM 教室内談話: 学習者間相互交流とL... @ オンライン(ZOOM)
教室内談話: 学習者間相互交流とL... @ オンライン(ZOOM)
11月 22 @ 7:00 PM – 12月 13 @ 8:30 PM
※この講座の内容は2022年実施分に準じます。 教室内談話: 学習者間相互交流とL2学習を考える 学習者同士が互いに話し合う活動は、近年の外国語(L2) 教室には不可欠です。また、学習者同士 が学習言語で対話する活動の意義やL2 習得における効果は、外国語教育において興味深いトピッ クの1 つです。本講義では第二言語習得理論を適宜参照しながら、外国語教室で行われる学習者同 士の対話の意義や先行研究で明らかになっている効能、より効果的な実践法や課題と展望について 考察を深めます。 【全4回】 日程: 第1回:2024年11月22日(金)19:00-20:30 第2回:2024年11月29日(金)19:00-20:30 第3回:2024年12月6日(金)19:00-20:30 第4回:2024年12月13日(金)19:00-20:30 内容: 第1回:「学習者同士のL2 対話」と第二言語習得理論 第2回:「学習者同士のL2 対話」と第二言語学習 第3回:「学習者同士のL2 対話」と教師 第4回:「学習者同士のL2 対話」とこれからのL2 指導 【受講料】9,000円(税込)※1講座のみお申込み:2,500 円(税込)
11月
30
1:00 PM ビジネス日本語研究会 第38回 研究... @ オンライン(ZOOM)
ビジネス日本語研究会 第38回 研究... @ オンライン(ZOOM)
11月 30 @ 1:00 PM – 5:00 PM
テーマ:ビジネス日本語における「チームワーク」を考える 現在、外国人材を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。日本で働く外国人労働者の増加、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度の創設などにより、インクルーシブな職場づくりの重要性が増しています。そこで、第38回ビジネス日本語研究会では、「チームワーク」をテーマとします。経済産業省が提唱した「社会人基礎力」のひとつである「チームで働く力」を、インクルーシブな職場ではどのように考えるのか、日本企業で採用に関わる方々のお話も伺いながら、「チームワーク」について、様々な視点から考えます。当日は多くの方にご参加いただき、活発な議論、意見交換が行われることを期待しています。 また、併せて研究発表を実施いたします。

注目の記事

  1. 日本語教育推進に尽力した中川元文科相が次期衆院選に出馬せず 元文部科学大臣で日本語教育…
  2. 日本語教師で「第二の人生」歩む——日本経済新聞の記事より 日本経済新聞の電子版はこのほ…
  3. LSHアジア奨学会が留学生65人に奨学金を授与、4年ぶりに交流会も 線路に転落した人を…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate