政府が日本語教育の基本方針を閣議で決定 施策の具体化、運用が今後の課題に

政府が日本語教育の基本方針を閣議で決定 施策の具体化、運用が今後の課題に

政府は6月23日、日本語教育の基本方針(日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針)を閣議決定した。向こう5年間にわたる政府の取り組みの大枠を決めたものだ。今後は基本方針に沿った施策の具体化や運用が課題になる。

2019年6月に施行された日本語教育推進法は、第10条で政府に「基本方針」の策定を求めており、政府の日本語教育推進会議でその内容の検討を進めてきた。これに関連して4月3日から24日まで「基本方針案」に対するパブリックコメントの募集が行われていた。パブコメでは463件にのぼる意見がメールや郵送で寄せられた。そうした意見を勘案して基本方針をまとめ、閣議に提出された。

日本語教育推進の基本方針では、第1章で「基本的な方向」、第2章で「内容に関する事項」、第3章で「その他の重要事項」を盛り込んだ。第1章では「国は日本語教育推進施策を総合的に策定・実施、必要な法制上・財政上の措置を講じる」、「地方公共団体は地域の状況に応じた日本語教育推進施策を策定・実施する」と、国と自治体の「責務」を明確化した。外国人を雇用する事業者には努力義務を課した。

教育内容に踏み込んだのは第2章で、国内、海外における日本語教育の在り方を列挙した。外国人児童・生徒の日本語教育の機会の充実のための方策や、外国人留学生、外国人労働者、難民、海外在住者の子どもなどの日本語教育の施策などを示し、その実施を求めた。また、日本語教育の水準の維持・向上のための日本語教師の資格の制度設計、人材育成のカリキュラムの開発などを課題として挙げた。

 

ICTを活用した遠隔教育については、地域における学習機会の確保だけでなく、必要に応じて学校教育、外国人就労者の学習にも取り入れるよう求め、その支援を施策に盛り込んだ。また、教育課程の編成に係る指針の策定に関しては、「日本語の習得段階の把握」を重視してヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)を参考に、「日本語教育に関わる全ての者が参照可能な日本語学習、教授、評価のための枠組みである『日本語教育の参照枠』を文化審議会国語分科会において検討・作成する」と明記した。

第3章では「日本語教育を行う機関に関する制度の整備」について言及。その中で「日本語教育を行う機関のうち、日本語教育の水準の維持向上を図るうえで必要な適格性を有するものに関する制度の整備について検討を行う」とし、そのうえで「検討結果に基づいて必要な措置を講ずる」と述べた。様々な課題を抱えた日本語教育機関の教育の在り方についても検討がなされるものとみられる。

基本方針は日本語教育推進法に「5年後見直し」条項が設けられており、日本語教育を取り巻く環境の変化に応じて政府は関係省庁の局長クラスで構成する日本語教育推進会議で2025年をめどにその中身を検討する方針だ。

にほんごぷらっと編集部

 

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」の全文は以下の通り。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/shokan_horei/other/suishin_houritsu/pdf/92327601_02.pdf

 

 

 

 

 

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