22日に日本議連が総会 日本語学校は何を訴えるのか

22日に日本議連が総会 日本語学校は何を訴えるのか

日本語教育推進議員連盟(河村建夫会長)の第14回総会が4月22日に開かれる。今回は日本語教師の国家資格創設が主たるテーマになるが、コロナ禍で留学生受け入れに悪戦苦闘する日本語学校の団体が意見を述べる機会も設けられた。日本語学校側からはどんな要望や意見が出るのだろうか。

総会で報告される国家資格の公認日本語教師に関しては、すでに文化庁が「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」で、2024年に試験の実施目標にするなどのタイムスケジュール案を提示し、議論を進めている。総会では文化庁が日本語教育推進法の立法当事者である日本語議連にその経過を説明する。議連内には様々な意見があるいわれ、文化庁の方針に注文が付けられる可能性もある。

これまでの調査研究協力者会議では、公認日本語教師の資格の創設にあたり、日本語教育機関を「留学」「就労」「生活」の3つに類型化する考えが提示された。日本語教育機関の制度整備については、日本語教育推進法が附則の中で検討するよう求めている。附則に盛り込まれた「日本語教育機関」は、日本語学校を想定する見方が多かったが、3分類されたことで公認日本語教師の対象が「生活」に関する日本語教育を行う「日本語教室」の教師などにも広げられることになった。

「にほんごぷらっと」は日本語議連の発足に合わせてその活動を記録し、広く知らせることを目的にして開設したサイトだが、推進法の成立後は日本語教育の主管官庁・部署を法的に定めるよう主張してきた。

各省庁が担当する仕事は、それぞれの組織令によって細かく定められ、文科省組織令には文化庁国語課の所掌事務として「外国人に対する日本語教育に関すること(外交政策に係るも並びに初等中等局及び高等教育局に所掌するものを除く)」と書かれている。高等教育局学生・留学生課の所掌事務には「外国人留学生の受け入れの連絡及び教育」とあり、日本語教育には言及していない。

現状では文科省で日本語教育に対応する部署は文化庁国語課だけで、しかも「生活者のための日本語教育」以外は担務としていない。従って、国語課は日本語学校に対して指示や指導をする立場にないわけだ。

1988年11月に中国・上海の日本総領事館を多くの若者が取り囲む騒動があった。留学ビザの発給を打ち切ったことに対する抗議のデモだった。中曽根政権の「留学生10万人計画」を受けて十分な教育施設や教師を整備していない日本語学校が林立したため、政府が中国からの留学生の入国を差し止めたのがきっかけだった。

上海事件と呼ばれるこの騒動は日中間の外交問題になり、日本政府は日本語教育振興協会(日振協)を設立して留学生の受け入れの審査・認定を行うなどして対応した。2008年には福田政権は「留学生30万人計画」を打ち出したが、民主党政権は2010年に日振協の設立の根拠法令がないことを理由に「事業仕分け」で日振協の審査事業をストップさせた。その後も2019年に日本語教育推進法が成立するまで、日本語教育は法的な環境整備がなされていない状態が続いた。

日本語教育推進法に基づき日本語教育推進の基本方針が閣議決定され、施策推進が法的にオーソライズされた。だが、推進法で国内の日本語教育の責任官庁とされた文科省が日本語学校をどのように処遇するのか、その方向性はまだ見えてこない。

議員連盟の総会という公式な場で日本語教育の6団体が意見を述べることになっており、日本語学校側からどのような意見が出されるか、注目される。

にほんごぷらっと編集部

 

にほんごぷらっと編集部にほんごぷらっと編集部

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の編集部チームが更新しています。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

4月
19
10:00 AM 凡人社オンライン日本語サロン研修... @ オンライン
凡人社オンライン日本語サロン研修... @ オンライン
4月 19 @ 10:00 AM – 11:00 AM
凡人社オンライン日本語サロン研修会『実践に基づく「やさしい日本語」の論点整理』 [日 時] 4月19日(土)10:00~11:00(オープン 9:40)※日本時間   [対 象] 日本語教育関係者、多文化共生に関心のあるすべての方   [定 員] オンライン:250名 ※ 先着順、定員になり次第締め切ります   [参加費] 無料 ※ 要予約、前日(4/18)17 時までに招待 URL を送ります   [講 師] 岩田 一成 先生(聖心女子大学)   [内 容] 『やさしい日本語ってなんだろう』(ちくまプリマー新書)を解説します。 10 年以上実践活動に関わって来て、まだまだ一般の人に「やさしい日本語」の理念は広がっていないなあと感じています。 病院関係者は英語志向が強いですし、学校のお知らせは規範に則って冗長なあいさつが冒頭部分を占領しています。 そして国や自治体の文書は細かい・抽象的・長い・硬い…といろいろなクセがあります。 これらは場面別にストラテジーを練る必要があると考えています。その際に大事な論点がいくつかあります。 ・「やさしい日本語」は話し言葉と書き言葉で別物である ・悪文追放は本来「やさしい日本語」運動とは無関係である ・メッセージの内容や社会制度が文章に強く影響を与える そんなお話をしたいと考えています。   [お問い合わせ・お申込み] 主催:凡人社 お問い合わせ・申し込み先(担当:凡人社/坂井) E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp   ※ 下記お申込みフォームかメールでお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「オンライン日本語サロン研修会(4/19)」と入れて、本文にご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。 お申込みフォーム→https://forms.gle/8A4mTHwVKRaUG3Y39
4月
27
4:00 PM オンライン読みもの作成入門講座 @ オンライン
オンライン読みもの作成入門講座 @ オンライン
4月 27 @ 4:00 PM – 7:00 PM
オンライン読みもの作成入門講座 概要 NPO多言語多読が作成した多読用読みものがどうやって作られているかを知り、実際に小グループで作る体験をしていただきます。初級学習者と中級学習者向けの2つの読みもののリライトを扱います。 ≫ 過去の報告を読む 講座の内容 多読用読みものの現状 多読用読みもののレベル分けについて 求められている題材とは? 初級向け、中級向けの多読用読みもの作成体験 作成した読みものへのフィードバック ※内容は参加者に合わせて変更することがあります 参加対象者 多読用読みもの作りに興味をお持ちの方 多読授業をやっている方で、ご自分の現場に合わせた読みものを作成したい方 NPO多言語多読の読みもの作りに参加したいとお考えの方 基本的に多読について知識がある方を対象にしていますが、多読について知識がない方は事前にご相談ください。
5月
16
5:00 PM 【教員対象オープン講座】中高生の... @ オンライン
【教員対象オープン講座】中高生の... @ オンライン
5月 16 @ 5:00 PM – 6:30 PM
日本語探究に関するレクチャーと「中高生日本語研究コンテスト」についての説明を行います。 次のような方におすすめです! ・「中高生日本語研究コンテスト」に関心をお持ちの中高・特別支援・義務教育学校の先生。 ・探究を担当されていて、生徒に様々なコンテストを紹介している先生(教科不問)。 ・日本語好きな生徒を担当している先生。 講師:田中 牧郎(明治大学)/ 村上 敬一(徳島大学)/ 又吉 里美(岡山大学)/ 岩城 裕之(高知大学) お申し込み:https://forms.gle/x8FvkXyzXAZDpR4n7 コンテスト専用サイト:https://www.junior-jpling.org/

注目の記事

  1. 主権国家である以上、国境管理をおろそかにすることはできない。その重責を担うのが出入国在留管理…
  2. 「全中国選抜日本語スピーチコンテスト本選」が5年ぶりに日本で開かれる——ネイティブ並みの日本…
  3. 新年を迎えて 2024年は日本語教育の大変革の年 日本語教師は新たな自己改革を 2024年…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate