日本語コミュニケーション学会が発足 10月23日に年次大会

日本語コミュニケーション学会(会長、岡田昭人・東京外大大学院総合国際学研究院教授)がこのほど発足し、10月23日にオンラインによるシンポジウムと研究発表を盛り込んだ年次大会を開催する。日本語使用者が多様化する中で、「コミュニケーション」を主軸とした研究調査活動や教育実践を目指そうという学会。コロナ禍でオンラインを活用したコミュニケーション手段が教育現場やビジネス界などに一気に拡大しており、新たな視点による研究活動の活性化が期待される。

同学会は岡田教授をはじめ、留学生教育学会会長の近藤佐知彦・大阪大学国際教育交流センター教授、王智新・早稲田大学教師教育研究所招聘研究員らが年明けから意見交換を重ね、岡田会長のほか、副会長に岩田康之・東京学芸大教授(留学生センター長)を選ぶなど骨格人事を決めて4月に発足。具体的な活動の在り方などを検討してきた。

着目したのは、日本語教育を取り巻く急激な環境の変化。2018年12月の入管法改正で日本政府は外国人受入れ政策を大きく転換し、外国人との共生社会の構築を目指す様々な施策を打ち出した。また、超党派の日本語教育推進議員連盟による議員立法で2019年6月に日本語教育推進法ができ、日本語教育を推進するための法整備が進んだ。

背景には外国人労働者、留学生やインバウンドによる海外からの観光客の急増など、急テンポで進む時代の流れがあった。政府側の対応の変化に伴い、「円滑なコミュニケーション」が重視され、日本語教育だけでなく幅広い意味でのコミュニケーションの在り方が問われるようなった。

さらにコロナ禍がコミュニケーションの在り方を激変させた。教育現場ではオンライン授業が行われ、職場ではテレワークが急速に普及した。ウイルスの感染防止の手段がインターネットによる新たな情報伝達の手段を拡大させた。コミュニケーションの概念を様々な角度から調査研究する必要性がより高まっているわけだ。

同学会では、調査研究活動として①CEFRに基づく言語使用者としての日本語・コミュニケーション能力定義②実用的な日本語能力4技能の評価基準と測定方法の最適化③教育機関や企業等、シーン・タスク別コミュニケーション達成のための日本語能力と教育――などを挙げている。また、調査研究を受けての教育実践の活動や内外の日本語教育の研究者らのネットワークづくりなどにも取り組む方針だ。

年次大会は学会として〝デビュー〟するための初の具体的な活動となる。テーマは「ポストコロナ禍における国際教育の展開と課題―日本語コミュニケーションを中心として―」。オンライン(ZOOM)で行い、岡田会長のあいさつのほか、シンポジウムや研究発表を行う予定。

岡田会長は同学会のホームページで「志を同じくする国内外の研究者だけでなく、広く民間企業や公的機関がこれまで以上に緊密に交流する場を日本に設定することが必須です。このたび日本語教育学会が発足したことは、この点において、きわめて大切なものと確信しています」と述べ、幅広い層の参加を呼び掛けている。

以下は、日本語教育学会のホームページのURL。入会案内、年次大会の情報もある。

年次大会

https://jlcc.jpn.com/society_2_a.html

入会案内

https://jlcc.jpn.com/society_4_a.html

なお、岡田会長のインタビュー・対談の動画をYou Tubeの「ぷらっとチャンネル」で見ることができます。

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12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
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日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
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本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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令和6年度生活指導担当者(中堅)... @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
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令和6年度生活指導担当者(中堅)研修 当協会では、日本語教育機関における生活指導担当者の能力向上を図るため、標記研修を実施しております。 今年度におきましても下記により実施しますのでご案内申し上げます。 なお、令和7年2月頃に初任の生活指導担当者を対象にした研修を実施予定です。 皆様のご参加お待ちしております。 1 日時 令和6年10月25日(金)10:00~17:20 2 会場 国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区) 3 参加要件 日本語教育機関又は大学・専門学校等教育機関の現場において、 少なくとも3年程度実際に留学生の生活指導に携わっていること。 4 参加費 維持会員機関 8,800円(税込)/1人当たり その他の教育機関  17,600円(税込)/1人当たり 5 応募締切:令和6年9月27日(金) 6 詳細、申込方法 https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3193&f=news 〔問い合わせ先〕一般財団法人日本語教育振興協会 事業部 小野寺陽子 TEL:03-6380-6557 FAX:03-6380-6587 E-mail: nisshinkyo2@gmail.com
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終日 2024年度 日本語教育学会_秋季大会 @ 姫路市市民会館(兵庫県)
2024年度 日本語教育学会_秋季大会 @ 姫路市市民会館(兵庫県)
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