岸田首相への手紙 入国制限を考えるパネリスト会議の内容を報告

岸田首相への手紙 入国制限を考えるパネリスト会議の内容を報告

岸田文雄首相は1月5日、東京都内で開かれた時事通信社主催の新年互例会で挨拶。この中でコロナ対策について「水際対策の骨格は維持しながらも、対策の軸足を国内対策へと移してまいります」と述べ、医療体制を整備するほか、経口治療薬の供給など挙げコロナ克服への対策を強化する考えを示した。

新たな年が明けたが、各党の党首からは夏に予定されている参院選を念頭に置いた発言が目立つ。岸田首相も昨年来、「慎重の上にも慎重を期し、最悪を想定しながら新型コロナ対応を進めていく」と繰り返す。海外で感染が急拡大するオミクロン株が日本国内にも流入している中で、首相は国民から一定に理解を得ていると考えているようだが、一方で留学生をはじめ技能実習生、高度人材などの入国制限の緩和を求める声を徐々に高まっている。

昨年12月6日にオンラインで開かれた「コロナ禍の入国制限を考えるパネル会議」では、様々な立場から長期化する入国制限の影響やその緩和を求める声が出た。パネル会議はそうした会議のまとめとして、以下のような「手紙」を岸田首相に送った。手紙などは以下の通り。

 

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内閣総理大臣

岸田 文雄 様

2022年をウイズコロナの希望の年に

内政、外交の様々な課題を解決するため、先頭に立ってご尽力されていることに心より敬意を表させていただきます。私たちは12月16日に「コロナ禍の入国制限を考えるパネル会議」をオンラインで開催しました。パネル会議の模様は内外の3000人が視聴し、NHKテレビも報じるなど大きな関心を呼んでおり、岸田総理にもぜひ状況をお知らせしたく、手紙をしたためる次第です。

登壇したパネリストは、留学生、技能実習生、外国人の高度人材や、外国人配偶者の受け入れ・支援に携わる人たちです。それぞれの立場から、外国人が日本に入国できない期間が長引いていることを憂慮する声が出ました。たとえば、大学や日本語学校、製造関連の中小企業、半導体生産などの先端企業の苦境はもとより、身近な野菜の生産や出荷が滞り、国民生活にも影響が出始めているという報告がありました。またその一方で、東京オリンピック・パラリンピックの水際対策では、新規入国者の適切な検疫措置により安全に受け入れられる実証を得ております。加えてワクチンの接種で感染者数を激減させたことで、政府は日本の「安心・安全」を立証しました。こうした日本の力を世界にアピールし、人材を受け入れる好機と捉えるべきという提案もありました。

岸田総理は、オミクロン株のリスクの度合いを慎重に見極めたいとして、年末年始の入国制限の緩和を見送る決断をされました。私たちは可及的速やかに制限を緩和されることを待ち望んでいますが、同時にオミクロン株の感染拡大が食い止めることが重要な課題であることも十分に認識しています。

 

岸田内閣がスローガンに掲げる「成長と分配」は、国境を越えて来日する外国人にも大きな呼びかけになると思います。例えば政府の「困窮学生への10万円給付」は、待機留学生にまで枠を広げていただくことで、しびれを切らして韓国や中国などに留学先・行き先を変えようとする外国人留学生や技能実習生を日本に引き留めるメッセージになるはずです。

2022年は、ウイズコロナの新たな時代の幕開けになると思います。感染症対策と経済の再生をどう両立させるか。私たちは岸田総理のリーダーシップに大きな期待を寄せています。

2021年12月     「コロナ禍の入国制限を考えるパネリスト会議」実行委員会

(事務局担当 カイ日本語スクール 山本弘子)

 

「コロナ禍の入国制限を考えるパネリスト会議」実行委員会

「コロナ禍の入国制限を考えるパネル会議」~ウィズコロナの時代を拓くために

2021年12月16日 20時~21時 オンライン開催

  1. 趣旨説明 モデレータ 石原進(日本語教育情報プラットフォーム代表世話人)
  2. 前提状況共有  山本弘子(カイ日本語スクール代表)
  3. 大学の状況   近藤佐知彦(大阪大学 国際教育交流センター教授)
  4. 日本語学校    江副隆秀(新宿日本語学校校長)
  5. 技能実習機関  青木 祥(全国人材支援連合会 専務理事)
  6. 外国人配偶者等 澤井勇海(日本学術振興会特別研究員-CPD)
  7. 高度人材    柴崎洋平(フォースバレー・コンシェルジュ株式会社代表)
  8. 海外留学生の声 Davide Rossi(GO!GO!Nihonコロナ禍の日本留学の扉を開く会代表)
  9. セッションまとめ 石原進

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