グローバル化に背を向けるニッポン 「岸田鎖国」はいつまで続くのか
「日本はいま、鎖国状態だ」。こう看破したのは、経団連会長の十倉雅和氏である。コロナ禍が長期化する中で、日本は外国人に際立った入国制限を課しているが、経団連会長が批判する「鎖国」政策を主導しているのは、岸田文雄首相だ。最近では「コロナ鎖国」という言葉も使われるようになったが、私はそれを「岸田鎖国」と呼びたい。岸田首相はいつまで「鎖国」を続けるのか。
コロナの変異株のオミクロン株が猛威を振るっている。東京などのまん延防止等重点措置も延期する方向だ。それでも、欧米は「ウイズコロナ」に舵をきり、経済活動を再開させつつある。オーストラリアなどは外国人観光客の受け入れにも踏み切るという。にもかかわらず、日本は……というムードも広がってきた。
大手のメディアは、なおオミクロン株の感染拡大への警鐘を乱打しているが一方で取り組みの「見直し」を求める論調の報道も増えてきた。毎日新聞は2月4日の朝刊でオミクロン株の拡大に伴う外国人の入国禁止措置への抗議の動きを伝える記事を1面と3面で展開した。
毎日新聞は1面で「新型コロナ対策」「令和の『鎖国』抗議」「日本の水際対策に批判」、3面では「扉あけぬニッポン」「留学生 韓国にシフト」「経団連 公然と批判」「首相 参院選見据え」の見出しを躍らせた。要するに「もう、外国人の入国禁止の措置は止めてはどうか」という論調だ。
記事ではドイツ・ハンブルグの日本総領事館前でドイツ人が「入国禁止措置は日本の将来にも損害を与える」と訴えるポスターを掲げた。留学を予定していたのに、入国禁止で「日本に行くために蓄えてきた貯金が消えていく」と嘆く。ツイッターではドイツ、イタリア、スペイン、マレーシアなどの若者が抗議の声を上げている。
「岸田さんは新型コロナまん延を外国人のせいにし、日本人に『共通の敵』を作った」「私たちと日本国民を対立させないで」。活動に賛同する在留外国人は、首相官邸に抗議行動を行うという。日米両国を拠点とする日本研究者や家族が離れ離れになっている国際結婚の人たちからも入国規制の緩和を求める声が上がっている。
また、日本経済新聞は2月7日朝刊の1面トップで「『コロナ鎖国』で日本離れ」「シメーンス、投資保留」の記事を掲載した。シーメンスはドイツの大手企業。同社の日本法人は社員の10~15%が外国籍で、「鎖国状態」が長期化する中で投資保留を検討しているという。記事では「ビジネス環境の悪化は鮮明だ」と憂慮。さらに技能実習生や留学生の入国規制にも言及し、「『コロナ鎖国』を貫けば企業の事業継続に深刻な影響が出る」とのシンクタンクの研究者の声を紹介している。
さらにこんなニュースも。マーケット・経済情報の動画チャンネル「日経CNBC」がネットで「岸田政権を支持しますか」と視聴者に「投資家サーベイ」(アンケート)したところ、「はい」は3%、「いいえ」は95.7%だった。「日経CNBC」は日本経済新聞社の関係会社。岸田首相は金融所得税の増税に前向きな発言をするなど株式投資の関係者からはブーイングの声が上がっていたが、ここまで「不支持」が多いとは。
https://www.nikkei-cnbc.co.jp/information/1914355
外資が日本を「売り」と判断し、投資株価が下落すれば、投資家だけでなく年金の資金運用にもひずみが出ている。「新しい資本主義」とは何なのか。経団連会長が「鎖国」という言葉で政権に苦言を呈したのも理解できる。動画チャンネスの「衝撃的なニュース]はネットで拡散されている。マスメディアでも話題になる可能性が大きい。
日本では、オミクロン株の感染拡大でまん延防止措置の拡大・延長の流れが加速することも想定される。マスメディアの感染者数を細かく伝えるステレオタイプの報道ぶりが国民の不安を増幅させている中では、岸田政権も「開国」の判断はしにくいと思われるが、長引く入国規制への内外からの批判も声を高まることが予想される。岸田首相は、より苦しい政権運営を迫られそうだ。
「にほんごぷらっと」編集長 石原 進