政府は日本語学校のコロナ禍の窮状を理解していないのか 「認定へのハードル」を危惧する声

政府は日本語学校のコロナ禍の窮状を理解していないのか 「認定へのハードル」を危惧する声

日本語教育機関認定法が4月に施行されるが、これに関連して「日本語教育機関の認定」についての資料が年末に公表された。その中の「設置者の要件」に関して、ある日本語学校の経営者から内容を危惧する声が「にほんごぷらっと」に寄せられた。

「設置者の要件」は「必要な経済的な基礎を有する」としたうえで、「当面(1年以上が望ましい)の運用資金を保有しており、かつ、設置者として超過債務の状態となっていないこと」などとしている。

しかし、日本語学校は2020年から3年余り、コロナ禍で経営面で甚大な被害を被っている。留学生の入国制限で収入がほとんどない状態で、多くの日本語学校は金融機関から融資を受けて細々と経営をしてきたのが実情だ。ポストコロナは融資の返済に迫られており、経営は当分の間、厳しいはずだ。「債務超過でない学校」がどれだけあるだろうか。

投稿者は「既存校の状況を考慮した柔軟な基準の適用」などを求めている。要するにコロナ禍への配慮が不可欠ではないか、というわけだ。同様の声は他の日本語学校関係者からも上がっている。日本語教育機関団体連絡協議会などでも議論すべき問題だろう。

「にほんごぷらっと」に投稿された文章は以下のとおり。

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認定日本語教育機関の認定について

2023年12月28日、日本語教育機関の認定に関する資料が、文化庁のホームページ上で公表され、年明けにはオンライン説明会が開かれた。そこで公表された認定要件には、昨年6月以降に開かれた委員会で審議内容に含まれていなかった要件が加えられ、日本語学校関係者の間で驚きと戸惑いが広がっている。

文化庁に公開された「留学のための課程を置く認定日本語教育機関の認定等について」という資料に示された「設置者の要件」の冒頭に「(1)日本語教育機関を経営するために必要な経済的基礎を有すること」とあり、続いて「イ 設置者が、当面(1年以上が望ましい)の運用資金を保有しており、かつ、設置者として債務超過の状態となっていないこと。なお、かつて債務超過の状態となっていた場合には、当面の運用資金を保有していることに加え、債務超過が解消したことが年次決算報告から確認されるとともに、その後も債務超過の状態となっていないことが年次決算報告又は中間決算報告から確認でき、かつ、その間の営業利益が黒字であること」とある。

つまり、十分な資金的余裕があり、債務超過でなく、安定した黒字の状態が確認できることが求められている。確かに新規校として新たに学校を設立する場合には十全な経済基盤を求める必要がある。一方、既存校は2020年から2023年4月末まで続いたコロナ感染拡大による入国規制により、多くの機関が約3年余りに渡って学生を受け入れることができないまま、制度融資などで当座を凌ぎ、ようやく昨年春以降に入国した学生たちを迎え入れ始めたところである。さらに株式会社立の場合は、オンラインなどで辛うじて得た学費収入にも消費税がかかり、余裕などあろうはずもない。特に独立系の小規模機関は資産規模も小さいため、債務超過のリスクも高い。小規模で、丁寧な募集活動を心掛けている機関ほど、認定から遠ざかることになる。

コロナは全世界同時に起きた予測不能な災厄であり、留学受け入れ機関として経営努力で補える範囲を遥かに超えた規模であった。そのため、今回出された認定要件は、コロナ禍を乗り越えた既存校が圧倒的に不利になる。既存校の状況を考慮した柔軟な基準の適用など、適切な対応を検討する必要があるのではないか。

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12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
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日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
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12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
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本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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異文化間コミュニケーション入門 @ オンライン(ZOOM)
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令和6年度生活指導担当者(中堅)... @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
10月 25 @ 10:00 AM – 5:20 PM
令和6年度生活指導担当者(中堅)研修 当協会では、日本語教育機関における生活指導担当者の能力向上を図るため、標記研修を実施しております。 今年度におきましても下記により実施しますのでご案内申し上げます。 なお、令和7年2月頃に初任の生活指導担当者を対象にした研修を実施予定です。 皆様のご参加お待ちしております。 1 日時 令和6年10月25日(金)10:00~17:20 2 会場 国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区) 3 参加要件 日本語教育機関又は大学・専門学校等教育機関の現場において、 少なくとも3年程度実際に留学生の生活指導に携わっていること。 4 参加費 維持会員機関 8,800円(税込)/1人当たり その他の教育機関  17,600円(税込)/1人当たり 5 応募締切:令和6年9月27日(金) 6 詳細、申込方法 https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3193&f=news 〔問い合わせ先〕一般財団法人日本語教育振興協会 事業部 小野寺陽子 TEL:03-6380-6557 FAX:03-6380-6587 E-mail: nisshinkyo2@gmail.com

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