一等賞 中国の「日本語の日」に私ができること  青島大学 王麗

テーマ「中国の『日本語の日』に私ができること」

中国の「日本語の日」に私ができること 青島大学 王麗

「麗ちゃん、来週青島へ旅行に行くんだけど、よかったらちょっと案内してくれない?」

先日、日本人の友達A君から旅行の案内を頼まれました。「いろんな観光地を回りたいけど、中国語が分からなくてね」と、私をたよってきたようでした。

実は、日本語を勉強してからの3年間、私は何度もこのような依頼を受けました。「観光地に日本語の説明看板がほとんどないから、ただ見るだけで、この建物は何のために建てられたのか、この彫刻にはどんな意味があるのか、よく分からない。説明してくれる人がいると本当に助かるよ」。一緒に青島を観光していた時、A君がそう言いました。

確かに、日本人観光客がガイドブックに載っていない建物などに興味を引かれた場合、詳しいことを知りたくても、説明看板がなければ旅行の楽しみも半減してしまうでしょう。中国語の説明看板だけあっても、中国語のできない日本人観光客にはあまり助けになりません。

毎年青島へ観光に来る日本人は多いのに、残念ながら青島に日本語の説明看板が少ないのが現状です。八大関、桟橋、五四広場、ビール博物館などとても有名な観光地の中で、日本語の説明看板があるのはビール博物館だけです。

青島だけでなく、中国のほかの観光都市でも大体同じ様子です。最近中国を訪れる日本人が減少しているなか、どうすればこの近くて遠い「隣人」と心の距離を縮めることができるか、真剣に考えるべきです。

私は自分と仲間たちとの努力でできそうなこととして、観光地に日本語の説明看板をふやすことを提案します。中国を訪れた日本人観光客が日本語の説明看板を目にするだけでも、中国が日本人を歓迎していることを感じ取ってくれるのではないでしょうか。日本の友人が中国に対して心温まるイメージをいだいてくれることを願います。それほど簡単なことではないかもしれませんが、私の提案に賛成してくれる日本語学習者を集めて、みんなで一緒に努力して、12月12日に行われる「日本語の日」にその成果を展示し、日本の友人にこの新たな魅力をアピールしたら、日本人観光客の増加に少しでも役に立てるでしょう。

では、具体的にどうすればいいのでしょうか?

まず、ネットで調査を行って、日本人に人気のある青島の観光スポットを調べ、その中から人気度の高いベスト5を選びます。

次に、青島の日本語学習者からボランティアを募集します。ボランティア全員でその観光地に足を運び、中国語の説明看板がある場合はその写真を撮ります。その後グループに分かれ資料を調べたり、先生の助けを求めたりして、正しい日本語で説明文を作成します。作成したら、一つ一つの説明文に対するQRコードをつくります。

最後に、関連部門に連絡して、QRコードを説明看板につけるようにお願いします。これが出来上がれば、観光客はスマートフォンでQRコードを読み取るだけで、日本語の説明を見ることができます。

もし12月12日までにみんなの力で全部完成できたら、その日に成果を展示して、日本の友人にこの新しい魅力を紹介します。万が一できなくても、青島にいる日本の友人や中国の日本語学習者を招き、日本語・中国語講座を開いて、私たちの成果の一部を紹介することができます。日本語の上達に役立つ上に、グループ全員が一生懸命努力した姿を見せることによって、日本の友人と心をかよわせることができるでしょう。

もしこの提案が実施に移されれば、参加する人たちは楽しみながらいろいろなことを学び、日本語能力を伸ばし、いい経験になると思われます。微力な学生ですが、日本人観光客の増加に少しでも貢献できれば幸いです。

「日本語の日」には、私のこの提案を紹介し、日本の友人に観光地の新たな魅力をアピールし、「日本語の日」を実り多き日にしたいと思います。

(指導教師 張科蕾、小川郁夫)

王麗(おう・れい)

1996年、山東省出身。青島大学日本語学部3年。この作文コンクールへの参加は今回3回目で、受賞は初めて。

日本語を学び始めた当初は「日本語が好きではなかったので、勉強がちょっと苦しかった」と振り返るが、「大学3年生の時、日本語を通して多くの日本人と友達になった。だんだん日本語が好きになり、今回の作文も日本の友人に便宜を図りたいと思って書いた」という。さらに作文については「受賞するためだけに書いたら意味がないと思う。もっと重要なのはそのアイディアを実行すること」として、「これからも一層努力し、『日本語の日』に作文に書いた理想の成果を示したい」と次なる目標を掲げている。趣味は、ウクレレ。

 

※本文は、第13回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」(段躍中編、日本僑報社、2017年)より。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

 

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留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
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日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
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12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
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本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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※この講座の内容は2022年実施分に準じます。 教室内談話: 学習者間相互交流とL2学習を考える 学習者同士が互いに話し合う活動は、近年の外国語(L2) 教室には不可欠です。また、学習者同士 が学習言語で対話する活動の意義やL2 習得における効果は、外国語教育において興味深いトピッ クの1 つです。本講義では第二言語習得理論を適宜参照しながら、外国語教室で行われる学習者同 士の対話の意義や先行研究で明らかになっている効能、より効果的な実践法や課題と展望について 考察を深めます。 【全4回】 日程: 第1回:2024年11月22日(金)19:00-20:30 第2回:2024年11月29日(金)19:00-20:30 第3回:2024年12月6日(金)19:00-20:30 第4回:2024年12月13日(金)19:00-20:30 内容: 第1回:「学習者同士のL2 対話」と第二言語習得理論 第2回:「学習者同士のL2 対話」と第二言語学習 第3回:「学習者同士のL2 対話」と教師 第4回:「学習者同士のL2 対話」とこれからのL2 指導 【受講料】9,000円(税込)※1講座のみお申込み:2,500 円(税込)
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テーマ:ビジネス日本語における「チームワーク」を考える 現在、外国人材を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。日本で働く外国人労働者の増加、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度の創設などにより、インクルーシブな職場づくりの重要性が増しています。そこで、第38回ビジネス日本語研究会では、「チームワーク」をテーマとします。経済産業省が提唱した「社会人基礎力」のひとつである「チームで働く力」を、インクルーシブな職場ではどのように考えるのか、日本企業で採用に関わる方々のお話も伺いながら、「チームワーク」について、様々な視点から考えます。当日は多くの方にご参加いただき、活発な議論、意見交換が行われることを期待しています。 また、併せて研究発表を実施いたします。

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