日本留学AWARDS2017年度報告書を刊行 座談会に〝アワーズ効果〟
- 2018/5/15
- ぷらっとニュース
- 日本留学AWARDS, 日本語教育振興協会
- 10 comments
日本留学AWARDS2017年度報告書を刊行 座談会に〝アワーズ効果〟
日本語学校の教職員が留学生に勧めたい大学、大学院、専門学校を選び、上位校を表彰する日本留学AWARDS(アワーズ)の2017年度の報告書が刊行された。アワーズの狙いは、進学先の「留学環境」をより向上させることにある。今回の報告書には大学、専門学校の受賞校関係者、そして高等教育機関に進学した留学生と留学生OBの2つの座談会を掲載した。座談会から留学生の受け入れ側と留学生側の当事者双方に〝アワーズ効果〟が出てきたようだ。
アワーズは、日本語教育振興協会の会員有志でつくる「アワーズチーム」が実務を担当。昨年度は9人が各日本語学校への投票用紙の作成から集計、表彰式、報告書の作成などに携わった。昨年で6回目を迎え徐々に投票に参加する学校が増え、計175校投票数は445票に。まだ十分な数とはいえないが、日本語学校の「世論」を形成しつつあり、大学や専門学校への影響力を持ち始めている。
昨年度の各部門の大賞受賞校は、東日本は私立大学文系が東洋大学、私立理工系は足利工業大学、大学院が早稲田大学大学院、国公立大学が横浜国立大学、専門学校が東京国際ビジネスカレッジ東京校。西日本は私立文系が四日市大学、私立理工系が福井工業大学、大学院が北陸先端科学大学院大学、国公立大学が名古屋大学、専門学校が辻調理師専門学校。早稲田大学大学院は5年連続で大賞を受賞した。5年連続大賞受賞校は「殿堂入り」し、翌年度から3年間、投票の対象校から外れる。
(アワーズの受賞校は次のサイトでhttp://www.ryugakuawards.org/untitled-c1036)
今回刊行された報告書には、受賞校の一覧や受賞校に寄せられた推薦理由、そのランキングや分析、大賞・入賞校の声などのほか、3つの受賞校の担当者と日本語学校卒業生5人の座談会をそれぞれ特集している。
受賞校の座談会には、静岡大学長補佐の白井靖人氏、専門学校東京国際ビジネスカレッジ学校長の高橋有弥氏、福井工業大学教授の尾崎禎彦氏が参加。ヨシダ日本語学院の一条初枝校長の司会で、まずアワーズ受賞の学内での評価などを聞いたところ、「大変嬉しいにことですし、励みになる」(白石氏)「受賞をきっかけに日本語学校にも(担当者が)よく出向くようになった」(尾崎氏)「受賞によって教職員のモチベーションが高まったのはもちろん、学生にとってもこの学校でよかったというプライドを持つことにつながっているよう」(高橋氏)など、それぞれ「アワーズ効果」を口にした。
また、「日本語教師からの大学、専門学校などへの要望」については、各学校から幅広く声を集めているが、座談会の中でも司会から改めて質問した。入学時の保証人制度については「保証人には身元保証と学費保証の2つありますが、基本的には本国の保護者になると思う。本学では現在、国内在住の方に身元保証も学費保証も求めることはしていません。ただ、入学手続きの際には国内の連絡先を提出していただいています」(尾崎氏)「日本語学校入学時に選抜され、2年間勉強してから入ってきているので保証人は一切求めませんが、本国の保護者の連絡先は教えてもらうようにしています」(高橋氏)などの答えがあった。
留学生の就職事情については「理系、文系でかなり違うと思う。修士課程の英語コースも理系だから就職しやすいというところがある。一方、文系の学生はやや苦労するかもしれません。ただ、留学生だから就職できないということは聞いていません」(白井氏)「2020年のオリンピックはかなり影響が大きく、専門学校からすると有難いことではあるのですが、2019年で求人が減るのではと考えています。五輪後、どういう求人が出てくるのか、それに対してどういうキャリ教育が必要なのかを考えなければいけない」(高橋氏)などの見方を示した。
一方、日本語学校卒業生座談会は東放学園音響学科1年(ヒューマンアカデミー日本語学校卒)の金材泫さん(韓国)、多摩美術大芸術学科4年(同)の李煕道さん(同)、早稲田大学大学院遺伝子工学博士課程2年(九段日本語学校卒)のカロリナ・フィアヨスさん(スペイン)、富士通勤務(横浜国立大学国際経営学科、青山国際教育学院卒)のダオ・フェンさん(ベトナム)、早稲田大学大学院教育学修士課程2年(ミツミネキャリアアカデミー卒)の先鶴さん(中国)の5人がカイ日本語スクールの山本弘子代表の司会で意見を述べ合った。
日本留学の動機やきっかけについては、「アニメが好きで美術大学に進みたいと考えていたが、お父さんから『美大だったら日本の方がいい』と勧められた」(李さん)「とりあえず日本語がうまくなりたくて3年前に日本にきた」(カロリナさん)「中国で日本語教師をしていました。留学してちゃんと日本語と教育学を勉強したいと思った」(先さん)「ベトナムの大学で日本語を勉強し、N3レベルになっていました。もっと日本語を磨きたいと」(フェンさん)「人生には何か変化が必要だと感じていました。何をすればいいか……、そうだ外国に行ってみよう、ならば日本で暮らしてみようと思い立った」(金さん)などと述べた。
日本語学校卒業後の進学をどのように決めたのか。「先生が勧めてくれた。それで受験したら、縁があった」(フェンさん)「オープンキャンパスで知った情報が決め手になりました」(カロリナさん)「私もオープンキャンパスに行ってみました。その中で東放がいちばんいい感じがした」(金さん)「日本語学校の先生が『多摩美はいい学校だよ』と薦めてくれた。ものは試しと受けてみました。そしたらなぜか受かった」(李さん)「教育学の修士課程のある大学をピックアップして、順番に受検しようと思ったら早稲田が一番早くて受けたら合格した」(先さん)などいろいろな決め方があったようだが、日本語学校の先生のアドバイスやオープンキャンパスが決断を促すケースが多いようだった。
日本語学校時代の学生生活については、「日本語学校は日本語が共通語でした。でも、大学では授業で使うのはすべて英語になってしまった。博士課程は忙しくてアルバイトをやめたので、日本語の能力がどんどん落ちています」(カロリナさん)「日本語学校では進学のため必死で勉強していました。大学は居心地がいいというのか、アルバイトやサークルに精をだした」(フェンさん)「日本語学校は学生が外国人ばかりで本当の日本語に触れられない。専門学校に進学したらガラッと変わった。周りは日本人ばかりで、やっと日本語だけをつかうようになり、本当に日本にいる感じがした」(金さん)「進学後日本人と話すのは(日本語の勉強の)本番という感じがしました若者言葉もおしえてもらった」(李さん)など、受け止め方は様々だった。
さらに「日本語学校でも大学でも先生方にいろいろサポートしてもらった。感謝の気持ちでいっぱい」(フェンさん)「私は、日本に留学している今が、本当に人生で一番楽しい」(金さん)などの声もあった。