関係閣僚会議と日本語議連はどんな関係か
日本語教育はどのように進められるのか
- 2018/9/6
- 多文化共生, 時代のことば
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関係閣僚会議と日本語議連はどんな関係か 日本語教育はどのように進められるのか
政府は7月24日に「外国人材受入・共生に関する関係閣僚会議」を発足させ、来年4月から外国人労働者を大幅に受け入れるための準備を本格的に進めている。この中で重要な事業とされているのは日本語教育だ。一方、超党派の日本語教育推進議員連盟は、先に日本語教育推進基本法の原案を作成し、秋の臨時国会に法案を提出する構えだ。その大きな2つの流れの中で今後の日本語教育推進の取り組はどうなるのか。
関係閣僚会議は行政府、日本語議連は立法府の取り組みだ。三権分立の建前からいえば、それぞれ独立した動きだ。ただし、日本語議連が日本語教育推進基本法(仮称)を成立させれば、政府が基本法に則って日本語教育の事業を進めることになる。政府が基本法の成立が遅れても、関係閣僚会議で事業方針を決定する見通しだ。
政府は来年4月から農業、介護、建設など5分野の新たな在留資格を設けるほか、業界団体の求めに応じてさらに新たな在留資格を十数種の業種にも拡大すると見られている。そのために法務省の外局として「入国在留管理庁」(仮称)を新設する方針だ。その取り組みも含めた「総合的対応策案」が先の関係閣僚会議に提出された。まだ検討の方向性を示す「中間まとめ」の段階で、来年度の予算編成が行われる12月までに最終報告書として整理される見通しだ。
それによると、外国人労働者の在留管理の充実のほか、「多文化共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動」「生活者としての外国人支援」が明記された。外国人との円滑なコミュニケーションを図るために日本語教育の取り組みを大幅に拡充するとしている。
具体的には、地方自治体の日本語教育の環境整備や日本語教室の拡大、ICT教材の開発、日本語教師の人材育成や研修、資格の整備、さらには日本語教育機関の評価の仕組みの検討などを挙げている。また、海外での取り組みとして、就業目的の日本語教育の充実、就業に必要なテスト、現地の日本語教師の確保、給与助成など、日本への渡航前の外国人労働者の日本語教育を重視しているよう。
これらの内容は、日本語教育推進基本法の原案と重複する部分が少なくない。というのは基本法の原案の作成に携わった関係省庁の担当者の多くが「中間まとめ」に関与しているとみられるからだ。そもそも日本語教育の充実という目的が一つなら、同じような事業が提案されても不思議ではない。
政府は12月の来年度の予算編成をにらんで総合的対応策の最終案をまとめるとみられ、それに沿って事業や施策が予算案に盛り込まれるだろう。来年の4月の新たな在留資格の創設に合わせて日本語教育など「共生」に関する施策はどの程度の整備ができるか。担当者は相当厳しい事務作業を強いられるはずだ。
一方、基本法は日本語議連幹部と衆院法制局で原案をもとに条文化作業に入っている。法案は日本語議連の総会と各党の了承を得たうえで、自民党総裁選後に招集される臨時国会に提案される。臨時国会で成立すれば、条文に盛り込まれた日本語教育の基本理念や「国の責務」の規定に基づき責任官庁が決まるほか、事業実施のための関係省庁担当者による「日本語教育推進協議会」と有識者による「日本語教育推進専門家会議」が設置される。
基本法は今後の日本語教育推進のための枠組みを作るのが大きな目的であり、そうした体制整備には一定程度時間がかかりそうだ。しかし、外国人がこれから大きく増加することを考えた場合、不可欠の法律となり、政府が施策を中長期的に推進するうえで重要な法的根拠になるはずだ。
石原 進