「多様性」が輝いたラグビーワールドカップ
- 2019/11/8
- 多文化共生, 時代のことば
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「多様性」が輝いたラグビーワールドカップ
日本列島が1カ月半にわたって熱く燃えた。日本で初めて開かれたラグビーワールドカップ(W杯)。日本チームのベスト8入りという大活躍もさることながら、ラグビー人気が大きく開花した。11月2日に横浜で行われた南アフリカ・イングランドの決勝戦には7万人を超えるファンが詰めかけた。全国16カ所に「パブリックビューイング」などが設置され、スタンドの外でも113万を超える人がラガーマンの激突に熱狂した。テレビの視聴率も極めて高かったようだ。
大会を主催した「ワールドラグビー」のビル・ボーモント会長は大会後の会見で「日本人の情熱はすばらしく、開催都市もたくさんの人を受け入れてくれた。開催国として最高だった」と言葉を弾ませた。日本ではマイナーなスポーツだったラグビーが、どうしてこれほど日本人の心をつかんだのか。
ラグビーは、フォワードの選手を中心に激しくぶつかり合い、チームが1つになって楕円形のボールをつなぐ競技だ。迫力とスピード感あふれるプレー。そして勝利を得るために不可欠な、自己犠牲の精神。個人主義が横行する現代にあって、フォアザチームのひたむきなプレーが日本人のメンタリティーを揺さぶったのかもしれない。試合が終われば、敵味方は関係ないノーサイドの精神もさわやかだった。
五輪やサッカーと違い、国の代表選手が必ずしも国籍を必要としないのも、ラグビーW杯の特徴だ。国籍を持たなくても「3年以上継続して居住している」「両親、祖父母の1人がその国に生まれている」「通算10年以上の居住している」のいずれかの条件を満たせば、代表選手になることができる。日本代表のチームも、登録選手31人のうち15人が外国籍や外国出身の選手だった。
試合前の国歌斉唱。赤白の桜のジャージーの選手たちは肩を組んで君が代をうたった。ニュージーランド出身のリーチ・マイケル主将は「国歌の意味まで知ることが日本代表だと思います」と語る。日韓関係が悪化しているが、元韓国代表の選手を父に持つ具智元選手の活躍に大きな声援が送られた。
リーチ主将は大会前、「日本人も外国人も一緒になって結果を出す。ダイバーシティ(多様性)がすごいチームだと思ってほしい。これからの日本はどんどんグローバルになる。いろいろ感じてほしい」とも話した。
月刊誌「アエラ」のインタビューに、前日本代表チーム主将の廣瀬俊朗さんは「これから日本は人口が減少し、外国出身の人と働く機会がどんどん増えると思います。日本ラグビーは、日本の未来の先をいっています」と答えていた。リーチ主将、廣瀬前主将のコメントは、それぞれにラグビーの魅力と時代の流れを上手に指摘している。
多様性を受け入れ、「共生」を象徴するようなスポーツイベントとなったラグビーW杯の盛り上がりは、大きく変化しつつある日本の姿を映し出したようにも見える。大相撲、サッカー、陸上競技などスポーツ界では「国際化」がどんどん進んでいる。2020年の東京五輪・パラリンピックでは、さらに大きな多様性のうねりが生まれるはずだ。
石原 進